国民にとって不利益な事実(「特定秘密」)もあばくと犯罪とされる

tokuteihimitu_definition その間に、英国政府核戦争が(万一)起こったらどうするかということについて独自の計画を立てていた。その計画がどんなものであるか,その一部について,我々は,「平和のためのスパイ(Spies for Peace)」と自称する組織から知った。この組織は,戦争が勃発したとき実行される政府当局の秘密計画を突き止めることに成功していた。(それによると)英国は多くの地域に分けられ,各地域が独自の政府をもち,各政府が独裁的権力をもち,各政府は事前に手配された官公吏の一団--彼等は地下の地方政府所在地(Regional Seats of Government)と呼ぶところで安全に生活すると想定されている。--から編成されており,我々のうちの’生き残り’をどうするかということを(敵の許しのある限り)決め,特にもし我々が生きていたとしたら原水爆の放射能塵をどう処理するかを決める,ということになっていた。多分そのような方法がとられることになるかもしれないという予想は一般大衆を喜ばせるものではなく,それゆえ秘密は保持されなければならない,と考えられた。 この「平和のためのスパイ」という組織は,この秘密計画の関連文書(注:いわゆる特定秘密文書)を何点か発見しており,それを出版したがっていた。(しかし)彼らは資金をもっていなかった。そこで私に訴えてきた。私は彼らにあげるつもりでで50ポンドを渡した。可能な限り早急にその文書は出版され,オルダーマストン平和行進に参加した人々の間に配布された。
不幸にも(そう私は感じたが),CND(英国における核兵器撤廃運動)の幹部たちは,秘密の手段が平和主義者たちによってとられたことに衝撃を受けた。彼らは,「平和のためのスパイ」が手に入れようとしていた情報(知識)が広まるのを妨げることできることは何でもやった。「平和のためのスパイ」が手に入れた新しい一まとめの文書が,発表されるだろうという思いのもと,平和主義の立場に立つ代表的な新聞の主幹に渡された。しかし彼は,それらの文書を暴露することを怖がり,また発表によって疑いなく罰を受けることを恐れ,その文書を「平和のためのスパイ」のメンバーの母親に送った。そうして,その母親は,警察の捜索を恐れてその文書を燃やしてしまった(注:マスコミの自己規制/つまり、学生の母親に自主的に秘密文書を処分させれば自分たちは罪にならないという思惑)。そのようにして,政府による救助計画及び,生き残ることを許される国民の救助(の内容)について知ろうとした我々の望みは絶たれてしまった。我々の立場を明確にし,平和活動を促進しようとすることに対する手痛い一撃が,よい意味での,また無知でもない平和主義者たちによって加えられたのである。

The British Government, meanwhile, had its own plans for what to do in the event of nuclear war. What these plans were we learned, in part, from an organisation which called itself ‘Spies for Peace‘. This organisation had succeeded in ascertaining the secret plans of Authority to be put into force on the outbreak of war. Britain was to be divided into a number of regions, each with its own government, each with autocratic power, each composed of a pre-arranged corps of officials who were to live in supposed safety in underground ‘Regional Seats of Government’ and decide (so far as the enemy allowed) what was to become of the rest of us, and, in particular, what was to be done about fall-out if and while we remained alive. It was feared that possibly the prospect of such measures might not please the populace, and must therefore be kept secret. ‘Spies for Peace‘ had discovered some of the documents involved, and were anxious to publish them. They had no funds, and appealed to me. I gave them £50 with my blessing. As soon as possible the documents were published, and copies were distributed among the Aldermaston marchers.
Unfortunately (as I felt) the leaders of CND were shocked that secret methods should be employed by pacifists. They did what they could to impede the spread of knowledge which the ‘Spies’ had sought to secure. A fresh batch of documents which they had secured was taken to the editor of a leading pacifist journal under the impression that he would publicise their information. But he, horrified by the disclosures and the retribution their publication would undoubtedly call down, sent the documents to the mother of one of the ‘Spies’ and she, fearing a police raid, burnt them. So died our hope of learning Government plans for governmental salvation and the succour of such members of the public as might be allowed to live. This bitter blow to the clarification of our position and to a great impetus to work for peace was dealt by well-meaning and not unknowledgeable pacifists。
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3, chap. 3:Trafalgar Square, 1969]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB33-390.HTM

[寸言]
特定秘密に指定された文書は、-その公開が国民の利益(これこそが「本来の」国益/国家の利益と国民の利益の乖離)となるとしても- 公開すれば犯罪者(それも重大な国家犯罪者)となってしまう。現政権は、最初の憲法改正(お試し改憲)を憲法に緊急事態条項を追加するためという口実でやったら一般国民の抵抗が比較的少なく改憲が実現できるのではないか、と考えているようである。緊急事態条項が盛り込まれれば、国民の私権が制限され、たとえば、敵国と内通する者を見つけ出すという口実で国民多数を監視したり、戦車が一般道を自由に動けるようになったりする。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です