ラッセル『権力-その歴史と心理』第2章:指導者と追従者 n.5


 服従衝動も,命令衝動とまったく同様に,現実的かつ普通にあるものであるが,この衝動は恐怖心に根ざしている。どんなに手におえない悪ガキ(悪戯な子供)であっても,たとえば火事といったような緊急事態においては,有能な大人の言うことに従順になるであろう。第一次大戦が起こった時には,パンクハースト夫妻(注:Emmeline Pankhurst, 1858-1928:妻の方は英国の婦人参政権活動家で,40歳年上の夫もその支持者。ラッセルもアリス夫人とともに婦人参政権運動をしていたので,彼女を個人的によく知っていたと想像される。)は,ロイド・ジョージ(注:D. Lloyd George, 1863-1945:第一次大戦中の1916年12月に総辞職したアスキス首相に代わって首相に就任)と和を結んだ。深刻な危険のある時には常に,大部分の人間の衝動は「権力」(注:大文字の Authority ここでは精神的権威ではなく,実際的な力を有した「権力」)を探し出してそれに従おうとする(ものである)。そのような時に革命を夢みる人はほとんどいないだろう。戦争が勃発すれば,民衆(国民)は時の「政府」に対して同様の感情を抱くものである。

Chapter II: Leaders and followers, n.5

The impulse of submission, which is just as real and just as common as the impulse to command, has its roots in fear. The most unruly gang of children ever imagined will become completely amenable to the orders of a competent adult in an alarming situation, such as a fire; when the War came, the Pankhursts made their peace with Lloyd George. Whenever there is acute danger, the impulse of most people is to seek out Authority and submit to it; at such moments, few would dream of revolution. When war breaks out, people have similar feelings towards the Government.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER02_050.HTM

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