(既にどこかで引用したと思われますが・・・/二度見る人はすみません。)
異なった国家政府間の関係が(国際)法によって規制されなければ,即ち,それが人類の一部にどれほど不人気であっても,いかなる国家政府より強力であり,自らの決定を強制できる力で規制されなければ,世界の永続的な平和を望むのは無益である。,驚いたことに,国家主権のほんのわずかでも譲るくらいなら,戦争のあらゆる恐怖にもかかわらず,あえて戦争を選びたいと言われるかもしれない。私は誤った意見だと思うが,この立場は理屈としては考えられる。
しかし,戦争には反対であるが,各国政府が紛争時において自己の立場の’最終的判定者’である現在のシステムに賛成であるという意見には,いかなる’論理の見せかけ’すらないことは確かである。もしも戦争が永久に廃絶されるべきであるならば,抵抗できない軍事力を備えた国際的な政府の樹立以外には不可能であろう。そして戦争の絶滅なしでは,文明は存続しえない。論理的推論力よりも愛国的感情の方が強い人にとっては,これは苦しいジレンマであるが,★戦争廃絶の必要性が知的に理解されなければ,事態の進展によって,悲惨に立証されるであろう。
It is useless to hope for lasting peace in the world until the relations between different national governments are regulated by law, that is to say, by a force stronger than any of the national governments, and able to enforce its decisions, however unpopular they may be with a section of the human race. You may say, if you please, that you prefer war, with all its horrors, to the surrender of one iota of national sovereignty. This is an intelligible position, though, to my mind, a mistaken one. But you cannot say, with any semblance of logic, that you are against war but in favour of the present system, according to which, in a dispute, every government is the ultimate judge in its own case. If war is ever abolished, it will have to be by the establishment of an international government possessed of irresistible armed forces. And if war is not abolished, civilization cannot survive. This is a painful dilemma for those whose patriotic feelings are stronger than their reasoning powers, but if it is not apprehended intellectually it will be disastrously proved by the march of events.
* if you please (古風な使い方で)驚いたことに
出典: Right and Might (written in early of 1930s and pub. in 1975 in Mortals and Others, v.1, 1975.]
詳細情報:http://russell-j.com/SEIGI.HTM
[寸言]
明治の始めに廃藩置県をやったように,廃「主権国家」置「世界連邦」が必要。各国には警察力だけ認めて,他国を攻撃する能力を剥奪し,強力な軍事力は世界連邦政府に集中する必要がある。旧主権国家は世界連邦のなかの自治領のようなものであるから,それぞれの文化や個性は保たれる。
(国家主権,特に,戦争を出来る権利を国際政府(あるいは世界連邦政府)に委ねたくないと思う人(「愛国心」にとらわれている人)が少なくない。廃藩置県により,各藩は戦争をする権利や軍事力を放棄したのと同様に,廃「国」置「自治領」して,世界連邦政府をつくり,軍事力を集中させれば,国と国との戦争はなくなるが,そう考えない人が多い。戦争によって人類(の文明)がほろびるのが先か,国家間の戦争をなくすのが先か・・・!?)
国民の生命を守る,というのならよいが,領土を「絶対に」守ると勇ましいことを言う政治家には注意が必要。領土については国によって考え方が違う以上,たとえ自分たちの主張が正しいとしても、「絶対に」という言葉(表現)で酔ってはいけない。本当に「絶対に」ということであれば戦争も辞さないということになり,最初は小競り合いだったものが,エスカレートしていき,非難合戦終始することになる。政治家とともに「愛国心」に燃えた国民も同調し,政治家は国民の支持があるということで、なかなかひけなくなってしまう。・・・。