ラッセル『権力-その歴史と心理』第5章 王権 n.2


 しかし,この種の王権(が存在するため)には,(それ以前に)長期にわたる政治の発展や未開人の社会よりずっと高度に組織化された社会がなくてはならない(注:presuppose ~が前提条件となる)。大部分のヨーロッパ人が考えているような,未開人の族長(部族長/酋長)でさえ,本当に原始的な社会において見出すことができない。我々が族長(部族長)と見なす人間は,宗教的な役割や儀式的な役割持っているだけかもしれない。時には,ちょうどロンドン市長(ロード・メイヤー)のように,祝宴を催すことを期待されるだけの人物である。時には,宣戦布告をするが戦闘にはまったく加わらない。なぜなら,彼はあまりにも神聖な人物だからである。時には,族長(部族長)のマナ(注:mana オセアニアの宗教での力の源)は,被支配者(部族民)が誰一人として族長(部族長)を仰ぎみることができないような(恐れ多きもの)である。これは,族長(部族長)が公務に多大な役割を持つことを効果的に防ぐ。族長(部族長)は,法律をつくることはできない。法律は慣習によって決定されるからである。族長(部族長)は法律執行(administration 行政)に必要とされない。小さな共同体(社会)においては処罰は隣人たちによって自発的に行われるからである。未開社会の中には,族長(部族長)が二人いるところもある。それは古代日本における将軍と「みかど(帝)」のように,俗的な長と宗教上の長である。神聖ローマ皇帝と教皇の関係とは異なっている。というのは,古代日本における宗教上の族長は(神聖ローマ皇帝とは異なり),一般的に,儀式的な権力のみを持っているからである。原始的な未開人の間では,一般的に,慣習によって非常に多くのものごとが決定され,公式の政治(統治)が決定するものはほとんどないので,ヨーロッパ人が族長(部族長)と呼んでいる傑出した人物は,王の権力のかすかな初期のもの(小さな権力)を持っているだけである。(原注:この問題については,リヴァース(著)『社会組織』参照)

Chapter V: Kingly Power, n.2

But kingship of this sort presupposes a long evolution of government, and a community much more highly organized than those of savages. Even the savage chief, as most Europeans imagine him, is not to be found in really primitive societies. The man whom we regard as a chief may have only religious and ceremonial functions to perform; sometimes, like the Lord Mayor, he is only expected to give banquets. Sometimes he declares war, but takes no part in the fighting, because he is too sacred. Sometimes his mana is such that no subject may look upon him ; this effectually prevents him from taking much part in public business. He cannot make the laws, since they are decided by custom; he is not needed for their administration, since, in a small community, punishment can be spontaneously administered by neighbours. Some savage communities have two chiefs, one secular and one religious, like the Shogun and the Mikado in old Japan-not like the Emperor and the Pope, since the religious chief has, as a rule, only ceremonial power. among primitive savages generally, so much is decided by custom, and so little by formal government, that the prominent men whom Europeans call chiefs have only faint beginnings of kingly power. (note:
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER05_020.HTM

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です