アメリカ、ファースト!-経済的ナショナリズムの哲学の末路


 今や世界中を通じて見られる経済的ナショナリズムの全哲学は(注:トランプのアメリカ・ファースト,英国のEU離脱、各国における自国第一の右翼勢力台頭の動き),次のような誤まった信念に基礎をおいている。すなわち一国の経済的利害は必然的に他国のそれと対立するという信念である。この誤まった信念は,国際的な憎悪と対立を生み出すことによって,戦争の原因となり,そうしてみずから(誤った信念)を真ならしめる(真理だと思わせる)傾きをもつ。なぜなら,ひとたび戦争が勃発すれば,国家的利害の衝突はあまりにも現実的なものになるだけだからである。たとえば製鉄業に従事する誰かに,他の諸国の繁栄がおそらくあなたにとっても有利となるだろう,ということを説明しようとしても,当人にその議論(論拠)をわからせることはまったく不可能であることがわかるだろう【例:トランプの支持基盤のラストベルト「錆びた工業痴態)。なぜなら彼がいきいきと意識している唯一の外国人というのは製鉄業に従事している競争相手だからである。(競争相手以外の)他の外国人などは,彼がまったく情緒的的関心を抱かない影のような存在なのである。これが,経済的ナショナリズムや戦争や人為的な飢餓などの心理的根源であり,また,人々が自分たちお互いの関係について,より視野が広くよりヒステリックでない見方をするように導びけない限り,我々の文明に悲惨で恥ずべき終えんをもたらすような,その他あらゆる悪弊の根源となっているのである。

The whole philosophy of economic nationalism, which is now universal throughout the world, is based upon the false belief that the economic interest of one nation is necessarily opposed to that of another. This false belief, by producing international hatreds and rivalries, is a cause of war, and in this way tends to make itself true, since when war has once broken out the conflict of national interests becomes only too real. If you try to explain to someone, say, in the steel industry, that possibly prosperity in other countries might be advantageous to him, you will find it quite impossible to make him see the argument, because the only foreigners of whom he is vividly aware are his competitors in the steel industry. Other foreigners are shadowy beings in whom he has no emotional interest. This is the psychological root of economic nationalism, and war, and man-made starvation, and all the other evils which will bring our civilization to a disastrous and disgraceful end unless men can be induced to take a wider and less hysterical view of their mutual relations.
出典:Bertrand Russell: Ideas That Have Harmed Mankind,1946.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0861HARM-100.HTM

<寸言>
America First! の不都合な結果がわかるのは、2,3年後かも知れないが,それがわかった時には、アメリカの世界における地位の相対的低下がはっきりすることであろう。

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