ミルがいま生きていて(人間の自由の問題について)本を書いているとすれば,どのような書き方をしたであろうかと推測することは興味深いことであり,またおそらく無益なことではないであろう。彼が自由の価値について言っていることは,(現在でも)修正なく擁護できる(立ち続けることができる)だろうと,私は考える。人類の生命が存続する限り,自由は,我々人類という地球上の存在が提供する最良のものの多くにとって,必須のものであるだろう(注:has to offer は 「~提供すべきもの」ではなく,「提供する」)。自由は,我々(人間)の最も基本的な本能のひとつに深い源をもっている。新生児は手足を締め付けられると,怒り狂って泣き叫ぶ。(子供の)欲しいと思う自由の種類は,歳を重ね成長するとともに,また知識の増大とともに,変化するが,素朴な幸福の必須の源泉であり続ける。自由が言われなく損なわれると,失われるものは幸福のみではない。(自由が損なわれると)よりいっそう重要かつ実現の困難な有用性も失われる。個人がこれまで人類のために行ってきた偉大な奉仕は,ほとんど全て,彼らをしばしば殉教にまで拡大するほどの激しい敵意にさらされてきた。このようなことは全て,ミルによって非常によく言い表されており,最近の事例を補う以外に(内容の)変更の必要はないであろう。
It is an interesting speculation, and perhaps not a wholly idle one, to consider how Mill would have written his book if he had been writing now. I think that everything he says on the value of liberty could stand unchanged. So long as human life persists, liberty will be essential to many of the greatest goods that our terrestrial existence has to offer. It has its profound source in one of our most elementary instincts: newborn infants fall into a rage if their limbs are constricted. The kinds of freedom that are desired change with growth in years and knowledge, but it remains an essential source of simple happiness. But it is not only happiness that is lost when liberty is needlessly impaired. It is also all the more important and difficult kinds of usefulness. Almost every great service that individuals have ever done to mankind has exposed them to violent hostility extending often to martyrdom. All this is said by Mill so well that it would require no alteration except the supplying of more recent instances.
出典: John Stuart Mill,1955.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1097_JSM-180.HTM
<寸言>
自由には「~の自由」と「~への自由」がある。封建時代に比べれば,(独裁国家は別にして)大部分の人にとって自由が増したことは言うまでもない。しかし,組織化が進むにつれて昔はなかった新たな「不自由」が増しており、そういった「不自由」を工夫や闘いよってできる限り少なく/小さくすることは、現代の課題である。