生まれつきの機能不全に対して道徳的に責任はない!


 教育における改革は,大部分,精神異常及び精神薄弱の研究を通して進んできた。なぜなら,彼らは自分たちの機能不全(failure)に対して道徳的に責任があるとは考えられず,従って,正常な子供たちよりも,より科学的に取り扱われてきたからである。つい最近まで,もし少年(a boy 子供)が課業(lesson)を学ぶことができないときには,杖(つえ)か鞭(むち)でたたく(打つ)ことが適切な対処法(矯正法)であるとみなされていた。こういった見方は,子供の取り扱いに関するかぎりほとんど消え去ったが,それは刑法の中に生き残っている。犯罪の傾向のある人間は止められなければならないことは明らかである。しかし,誰も道徳的に責任はないと思うだろうが,狂犬病(注:恐水病ともいう)にかかっていて,他人に噛み付こうとする人間も止められなければならない。疫病にかかっている人は治癒するまで隔離されなければならないけれども,その人を悪い人間だと思う者は誰もいないであろう。同様な対応(注:一般人からの隔離=投獄)が,偽造を犯す傾向で苦しんでいる人に対してなされるべきである。しかし,いずれの場合にも罪悪感をもって対処してはならない。そうして,それは常識にすぎないけれども,キリスト教道徳(倫理)及びキリスト教の形而上学はこのような形式の常識に反対しているのである。

Reforms in education have come very largely through the study of the insane and feeble-minded, because they have not been held morally responsible for their failures and have therefore been treated more scientifically than normal children. Until very recently it was held that, if a boy could not learn his lesson, the proper cure was caning or flogging. This view is nearly extinct in the treatment of children, but it survives in the criminal law. It is evident that a man with a propensity to crime must be stopped, but so must a man who has hydrophobia and wants to bite people, although nobody considers him morally responsible. A man who is suffering from plague has to be imprisoned until he is cured, although nobody thinks him wicked. The same thing should be done with a man who suffers from a propensity to commit forgery; but there should be no more idea of guilt in the one case than in the other. And this is only common sense, though it is a form of common sense to which Christian ethics and metaphysics are opposed.
出典:Has Religion Made Useful Contributions to Civilization? 1930
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0466HRMUC-150.HTM

<寸言>
津久井やまゆり園で大量殺人を行った植松聖(容疑者)は,社会に役に立たない人間は税金を浪費するだけなので,国家としてそういった人たちは安楽死させたほうがよいという妄想にとらわれた,と報道されている。
こういった事件ではいつも犯罪実行者の自己責任能力が論争になる。自己判断能力がなくて衝動的に犯罪を犯した場合は刑事責任は問われずに,必要に応じて一般市民から隔離されたり、要観察処置がとられる。
植松聖容疑者の場合は、判断能力もあり、責任を問うことができるとされている。自己責任能力を問えない場合は、社会事態がそういった人たちが一般市民に害を及ぼさないように、適切な措置がとられるべきということであろう。

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