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バートランド・ラッセル格言・警句集 - Russell's Axiom

『ラッセル幸福論』より


[n.0066:自分の幸福と愛する人の幸福]


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 私たちは,愛する人びとの幸福を願うべきであるが,私たち自身の幸福と'引き換え'であってはならない。(★出典
(愛する人のために自己を犠牲にすることを万人がみならうべき徳目としたらどうなるであろうか。/自分の幸福のために自分の愛する人が犠牲になるとしたら,愛されている人も心苦しいであろう。/「愛する人のために」という言葉を「愛する国のために(敵国と戦う)」とか「家族を守るために(敵国と戦う)」と言い換えたらどうであろうか? 自分たちの国土が侵略にあったのであれば是非そうしなければならないだろうが,よその国に赴いて「日本のため」「愛する人々のため」などと'自己犠牲'を強調してもそれは自己欺瞞ではないか? そう思わない政治家や国民も少なくない。「日本のため」「愛する人々のため」であれば外国に赴いて外国人を殺すこと(攻撃は最大の防御)は'必要悪'とでも言うのであろうか? 「はむかってくるから自衛のために戦うだけ」と言っても,では日本に外国の軍隊が'平和を維持するため'と言って侵入してきたらどうか。彼らも同じような言い方をするであろう。/固有の文化に対する愛着ではなく,' 国体'のような'「政治的な愛国心」を強調する人々は自己欺瞞に陥っているのか,そうでないとしたら,単に冷静かつ客観的に物事を考える能力に欠けているだけなのであろうか?)


We should desire the happiness of those whom we love, but not as an alternative to our own.

[n.0065:幸福な人間とは]

 幸福な人'とは,客観的に生き,自由な愛情と幅広い興味を持ち,またそういう興味と愛情を通して,今度は逆に,他の多くの人びとの興味と愛情の対象になるという事実を通して,自らの幸福を確保する人である。(★出典
(自意識過剰な人間は嫌われる。視野が狭く,自分のことばかり考えている人間も嫌われる。打算の上で,他人に親切な行為をする人も好かれない。/事実や現実に目をつぶらず,視野が広く,他人の幸福を,あたかも自分の幸福であるかのように感じられる人は幸福な人間である。)

The happy man is the man who lives objectively, who has free affections and wide interests, who secures his happiness through these interests and affections and through the fact that they, in turn, make him an object of interest and affection to many others.

[n.0064:真実に耐える学習]

 自己欺瞞に支えられているときにしか仕事のできない人たちは,自分の職業を続ける前に,まず最初に,真実に耐えることを学習したほうがよい。(★出典
(建前と本音の使い分け/表立って本音を言うと失職するので,公に対しては,あくまでも建前を言うか,あいまいな言葉を使う。/どこかの首相のように,「美しい日本」を標語に,子供や国民一般には,自分のメルマガなどで,法律をおかさなくても道徳的に悪いことをしてはいけないとか,国を愛することの大切さを説きながら,身内の大臣がおかしなことをやって国民に説明しなくても,(自分の内閣がガタガタになるといけないので)'法律的には問題ない'と,批判を無視してしまう。二枚舌や自己欺瞞は,子供の教育や躾に甚だよろしくない。そのような為政者に,「美しい日本」などと言った標語を使う資格はないだろう。) >

Those who can only do their work when upheld by self-deception had better first take a course in learning to endure the truth before continuing their career, since sooner or later the need of being sustained by myths will cause their work to become harmful instead of beneficial.

[n.0063:感情の浪費を避ける]

 実際的な'仕事における能率'は,私たちがその仕事に注ぎこむ感情(の多少)に比例しない。(★出典
(冷静な判断を伴わない精神論や過大な思い入れは,目的を達成する邪魔になることも少なくない。/目的に向かって,たんたんと課題を処理しましょう。)

Efficiency in a practical task is not proportional to the emotion that we put into it.

[n.0062:感情の浪費を避ける]

 '賢い人間'は--防げる不幸を座視することはしないが--'避けられない不幸'に時間と感情を浪費することもしないだろう。 (★出典
(避けられる不幸なのか,避けられない不幸なのか,判断が難しい場合は少なくない。/自力解決を簡単にあきらめるのもよくないが,自分に力がないのを理解せずにむやみにジタバタするのも知恵がない/避けられない不幸だと判断可能な場合,あるいは少なくとも現時点では抵抗できないと思ったら,無駄なエネルギーを使わない方がよいだろう。・・・。)

The wise man, though he wiil not sit down under preventable misfortunes, will not waste time and emotion upon such as are unavoidable, and even such as are in themselves avoidable he will submit to if the time and labour required to avoid them would interfere with the pursuit of some more important object.

[n.0061:軽信は禁物]

 真理はいつも面白いわけでないけれども,多くの事柄が--実際には,面白いという以外に有利な証拠はほとんどないが--面白いという理由(だけ)で信じられている。 (★出典
(人の噂などというものは頼りない・いいかげんなものであり,多くの場合,間違っている。しかし他人(ひと/第三者)は,自分の場合だったら憤慨するようなことも,他人のことであると「ありえる」と思ってしまい易い。/お互い,人(他人)の噂話は,疑ってかかった方が安全である。噂話の対象が,敵・嫌いな相手であれ,味方・好きな相手であれ・・・。)

Truth is not always interesting, and many things are believed because they are interesting; although, in fact, there is little other evidence in their favour.

[n.0060:不幸の予防策]

 不幸に遭遇したときによく耐えるためには,幸福な時期に,ある程度幅広い興味・関心を養っておくことが賢明である。 (★出典
(つらい経験をしたことが余りない人は,ちょっとした不幸で落ち込んでしまう。人によっては,それが「感受性が豊かな証拠」だと勘違いする人もいる。/ちょっとしたことで動揺する人は,「世間知らず」であり,狭い世界に住んでいる人である。/興味関心の対象が狭いと,それらが失われると,気分転換によって不幸を耐えやすくすることができない。/子供の幸福を望むのであれば,親や社会は,子供に広い視野や興味関心を持てるように家庭の躾や教育をしなければならない。)

To bear misfortune well when it comes, it is wise to have cultivated in happier times a certain width of interests.

[n.0059:目先の勝利]

 現代の高等教育の欠点の一つは,ある種の技術・技能を獲得するための訓練があまりにも多すぎ,'世界の偏見のない概観(調査)'によって'知性'と'心'を広げることがあまりにも少なすぎた,という点である。 (★出典
(この直後の発言は今でもあてはまる。即ち,「たとえば,あなたは'政治闘争'に没頭し,あなたの政党の勝利のために一生懸命に働くとしよう。そこまでは,それでよいだろう。しかし,闘争の過程で,世界中に憎悪や暴力や疑惑を増大させる見込みのある(予想される)方法の使用を(必然的に)伴う何らかの'勝利の機会'の出現が,偶然生じるかもしれない。たとえば,勝利を得るには,ある他国民を'侮辱'するのが最良の道であるとあなたは発見するかもしれない。もしも,あなたの'精神の視界'が現在に限られており,あるいは,もしもあなたが,重要なのはいわゆる能率のみであるという教義を受容しているのであれば,あなたは,そういう'疑わしい手段'を採用するだろう。そうした手段によって,あなたは,'当面の目的'においては勝利を収めるだろうが,一方もっと遠い将来の結果は,破滅的なものであるかもしれない。」)

It is one of the defects of modern higher education that it has become too much a training in the acquisition of certain kinds of skill, and too little an enlargement of the mind and heart by any impartial survey of the world.

[n.0058:'狂信'の本質]

 '狂信'の本質は,望ましいことを1つか2つ覚えていて,それ以外のことは全て忘れてしまい,この1つか2つのことを追求するにあたっては,他の種類のいかなる付随的に起こる害も大したことではない,と考えることにある (★出典
(特定の政党に属する政治家は,反体政党を「諸悪の根源」のような非難の仕方をする。/このような態度は,政治家に限ったことではなく,国民一般にもよく見られる。/もっとも多くの政治家の場合は,もっと不節操であり,より権力を握れるほうに,政党の所属さえも変えてしまう人も珍しくない。良いことを行うにも,権力を握る必要があると主張し,いつの間にか手段が目的化してしまう)

Fanaticism consists essentially in remembering one or two desirable things while forgetting all the rest, and in supposing that in the pursuit of these one or two any incidental harm of other sorts is of little account

[n.0057:不当な反応]

 私たちはみな,不当に興奮したり,不当に緊張したり,自分たちの住んでいる世界の片隅や,生と死の間のほんの一瞬の時間の重要性を不当に買いかぶる傾向がある。 (★出典
(本当に自分が望むものを発見でき,熱中することができるのであれば幸せなことである。/しかし,そのようなものでなくても,何も熱中できるものがないよりは熱中できるものがあった方がよいということで,何らかの対象に,不当にこだわったりする(固執したりする)ことがある。/自分が心から追い求めるものを見つけられた人は,何であれ,それらのものについて,不当に興奮したり,不当に重要性を強調したりすることはないであろう)

We are all inclined to get unduly excited, unduly strained, unduly impressed with the importance of the little corner of the world in which we live, and of the little moment of time comprised between our birth and death.

[n.0056:井の中の蛙]

 私たちは,自分たちの職業や,自分たちの仲間社会,自分たちの仕事の種類に非常にたやすく没頭するために,それらが人間活動全体の中のいかに小さな部分でしかないか,また,私たちの活動によって,世界中のいかに多くのものがまったく影響されないかということを,忘れてしまう。 (★出典
(井の中の蛙/蛸壺社会/木を見て林を見ず,林を見て森を見ず/宇宙から地球をみれば,地球の表面上にばい菌のように繁殖した人類;しかしそれを対象化できる人間の精神はすばらしい,という人がいるが,果たして・・・)

It is very easy to become so absorbed in our own pursuits, our own circle, our own type of work, that we forget how small a part this is of the total of human acitivity and how many things in the world are entirely unaffected by what we do.

[n.0055:気分転換]

 仕事が終われば仕事のことは忘れ,翌日再開するまで思い出さない人は,その間ずっと仕事のことを気にかけている人よりも,ずっとよい仕事をしそうである。 (★出典
(続いてラッセルは次のように言っている。「仕事以外について興味をたくさん持っていれば,持っていない場合よりも,仕事を忘れるべきときに忘れることがずっと容易になる。」/即ち,興味・関心の対象が広いことは,幸福の条件の1つである。)

It is very much easier to forget work at the times when it ought to be forgotten if a man has many interests other than his work than it is if he has not.

[n.0054:意識下の思考]

 眠っているとき以外,'意識的な心'は決して休むことを許されないが,一方,'意識下の思考'は,徐々に知恵をつけ,成熟していく。 (★出典
(起きているときに押さえつけておいても,寝ている時には,押さえつけられたものが制止を聞かずに勝手きままに振舞う/意識されるものに注意を払い,意識化や無意識の世界を甘く見ると手痛い反撃にあうかも知れない/「夢」という言葉は良いイメージで使われることが多いが,実際は,(意識下の世界である)「夢の世界」は,自分にとって都合の良いものよりも都合の悪いものの方が多く出現するそうである。真実であろうか)

Except in sleep the conscious mind is never allowed to lie fallow while subconscious thought matures its gradual wisdom.

[n.0053:不幸や疲労や'神経の緊張'の原因]

 不幸や疲労や'神経の緊張'の原因の一つは,自分自身の生活において実際的な重要性のないいかなるものに対しても興味・関心を持つことができないことである。 (★出典
(注:岩波文庫の安藤訳では,「そういうことの果てに,意識的な心は,ある少数の事柄から休息を得ることができなくなる。しかもそうした事柄の一つ一つには,おそらく,多少の不安と多少の不安の要素が含まれているのだ」となっているが,これだとニュアンスがよくわからない。/(松下の解釈)from は「原因(・・・のために)」:自分や家族にとって重要性のあるものに注意が集中し,他のものには,興味が持てなくなる→すると,わずかな(少数の)心配事なども,(通常であればそのような些細な心配事は,気分転換によってうまく処理されるのであるが,)頭の片隅に残ってしまい,それが原因で気が休めなくなる。また,表面上は振り払ったと思っても,意識下では働いていて,やはり休息がとれなくなる)

One of the sources of unhappiness, fatigue, and nervous strain is inability to be interested in anything that is not of practical importance in one's own life.

[n.0052:首尾一貫した目的]

 '首尾一貫した目的'だけでは,人生を幸福にするのに十分ではないが,首尾一貫した目的は幸福な人生のためのほぼ必須といってよい条件である。 (★出典
(世の中の流行や力ある者の意向に影響され,あっちへゆらゆら,こっちへゆらゆら/こだわらないことはいろいろな経験ができて良い面もあるが,中途半端な満足の連続(あるいは自分が本当に求めていることを我慢する習慣)は,不幸の原因となりやすい/首尾一貫した目的や情熱を持てるに越したことはない。もちろんそれだけでは幸福な人生を送るに十分ではないだろうが・・・。)

Consistent purpose is not enough to make life happy, but it is an almost indispensable condition of a happy life.

[n.0051:'憎しみの習慣'を治す]

 重要な種類の建設的な仕事をする機会ほど,'憎しみの習慣'を治してくれそうなものは,ほとんどない。 (★出典
('憎しみの感情'は,ただ無理やり抑えようとしてもなかなか消えない。しかし,自分が興味を持て,やりがいのある,重要な建設的な仕事をする機会にめぐまれれば,そういった仕事をやっているうちに,不思議に'憎しみの感情'は薄らいでいくように思われる。それは個人対個人だけでなく,国家(国民)対国家(国民)間の憎しみにも言えるだろう。/政党,重要な地位にある政治家などが,人気取りのために,他国に対する破壊的な憎しみの感情をあおるようなことは,すべきではない。)

Few things are so likely to cure the habit of hatred as the opportunity to do constructive work of an important kind..

[n.0050:最も満足できる目的]

 最も満足できる目的'とは,1つの成功から次の成功へと無限に導く,決して'終わりのない目的'である。 (★出典
(簡単に達成できることは達成しても満足感が余りもてない。困難であればあるほど,困難を克服して目的を達成すると喜びが大きい。しかし目的・目標の達成によって目的・目標がなくなってしまうと不幸である。即ち,ラッセルが言うように,「最も満足できる目的'とは,1つの成功から次の成功へと無限に導く,決して'終わりのない目的'」である。)

The most satisfactory purposes are those that lead on indefinitely from one success to another without ever coming to a dead end; and in this respect it will be found that construction is a greater source of happiness than destruction.

> [n.0049:余暇(時間)を'知的に'使うこと]

 余暇(時間)を'知的に'使う(←満たす)ことができるということは,文明の最後の成果であり,現在,このレベルに達している人はほとんどいない。(★出典
(経済的にめぐまれている人は,現代においては多種多様な楽しみを享受することが可能であるが,'知的な'お金の使い方をしている人は少ない。一方経済的にめぐまれていなくても,'知的に'余暇を使うことは可能だが,年を取っても働かなくてはならず,金銭的な制約や,肉体的あるいは精神的疲労のため,余暇を充分楽しむことができない。)

To be able to fill leisure intelligently is the last product of civilisation, and at present very few people have reached this level.

[n.0048:生命の流れ]

 この世で幸福になるためには,特に青年期が過ぎてからは,自分のことを,'まもなく一生を終える孤立した個人'として感じるだけでなく,最初の胚種から遠い未知の将来へととどまることなく流れていく生命の流れの一部だと感じることが必要である。(★出典
(「自分が死んだらすべておしまい」としか考えられない人は,不幸な晩年を過ごすことになりやすい。自分が死んでも自分の子孫を通して末永く生命は続いていくと思えば少し心は安らぐ。このような情緒は,無神論者であっても可能である。/それでは子供のない人間は? 他人の子供であっても自分の子供のように愛情を持てる人間は,子供がいても愛情を持てない人間に比べ,ずっと幸福であるだろう)

To be happy in this world, especially when youth is past, it is necessary to feel oneself not merely an isolated individual whose day will soon be over, but part of the stream of life flowing on from the first germ to the remote and unknown future.

[n.0047:親と子の関係]

 両親の子供に対する愛情および子供の両親に対する愛情は,幸福の最大の源の一つとなりうるが,実際は,今日においては,親子関係は90%までは両者にとって不幸の源になっており,99%は少なくとも一方にとって不幸の源になっている。((★出典
(引きこもり,受験競争,就職できない若者,いつまでも独身の子供を抱えた年老いた親/子供を顧みない若い親,精神的に成長していない未熟な大人が子供をもつことの弊害,平均寿命がのびたことにより年金では生活できない老人の増加/教育も含め競争原理があらゆるところで導入され,いろいろな格差が拡大,がんばった人に報いる社会をといううたい文句,しかし大部分の人は成功しないのはあきらか,それがジュパニーズ・ドリームとでもいうのか?)

Affection of parents for children and of children for parents is capable of being one of the greatest sources of happiness, but in fact at the present day the relations of parents and chndren are, in nine cases out of ten, a source of unhappiness to both parties, and in ninety-nine cases out of a hundred a source of unhappiness to at least one of the two parties.

[n.0046:本物の愛情]

 二人の人間が相手に対して本物の'相互的(双方向の)関心'を持っているという意昧での愛情,即ち,相手を幸福のための手段として見るだけではなく,むしろ共通の利益(幸福)を持つ'結合体'だと感じる愛情は,真の幸福の最も重要な要素の一つであり,自我が鋼鉄の壁の中に閉じ込められていて,このように自我を拡大することが不可能な人は,たとえ仕事(キャリア)の面でどんなに成功していても,'人生が提供する最良のもの'をつかみ損なっていることになる(★出典
(相手を自己実現のための手段としてみるのではなく,同等の人間と認めること/相思相愛+相互理解+共通の目的,共通の感情をもてることが理想だがなかなか難しい/難しいとしても自己満足だけの人生に終わらせないためには・・・)

Affection in the sense of a genuiun reciprocal interest for two persons in each other, not solely as means to each other's good, but rather as a combination having a common good, is one of the most important elements of real happiness, and the man whose ego is so enclosed within steel walls that this enlargement of it is impossible misses the best that life has to offer, however suceessful he may be in his career.

[n.0045:恋は盲目]

 多くの人は,恋をすると,世間から逃れるためのささやかな'安息所'を捜し求めるが,そこでは,感心すべきでないのに感心し,賞賛される価値がないのに賞賛されることを確信していられる。(★出典
(Love is blind/あばたもえくぼ/一生そうであれば幸福なのだが,いずれ熱も冷め・・・/お互いを見詰め合うよりも,同じ方向を見つめたほうが・・・)

Many people when they fall in love look for a little haven of refuge from the world, where they can be sure of being admired when they are not admirable, and praised when they are not - praiseworthy.

[n.0044:逃避の原因]

 1つの欲望が度を越し,他の全ての欲望を犠牲にする人は,通常,根深い'心配事(や悩み)'をかかえていて,'恐ろしいもの'から逃れようとしている人である。(★出典
(熱烈な〇×ファン,アルコールや薬物への依存症,とにかく何かを過度に偏愛・固執する人は,直視したくない何らかのものから逃げている場合が多い)

The man in whom one desire runs to excess at the expense of all others is usually a man with some deep seated trouble, who is seeking to escape from a spectre.
[n.0043:特殊化された興味]

 非常に'特殊化された興味'は,人生に対する一般的な熱意ほどには幸福の満足すべき源泉にならない。なぜなら,そういった興味で,ある人の時間のすべてを満たすことは可能ではなく,また,彼の趣味となった特定の事柄について知るべきことはすべて知り尽くしてしまう,という危険が常にあるからである。(★出典
(熱烈な〇×ファン,アルコールや薬物への依存症,とにかく何かを過度に偏愛・固執する人は,直視したくない何らかのものから逃げている場合が多い)

Very specialised interests are, however, a less satisfactory source of happiness than a general zest for lffe, since they can hardly fill the whole of a man's time, and there is always the danger that he may come to know all there is to know about the particular matter that has become his hobby.

[n.0042:誰にでも,興味を持てるものがあるはず]

 何がその人の興味・関心を起こさせるか,事前に推測することはできないが,大部分の人は,何らかのものに強い興味を持つことができるし,いったんそういう興味が呼び起こされれば,その人たちの人生は退屈から解放される。(★出典
(強い興味を持てるものを小さい時に見つけ一生を追求できる幸福な人も少数いる。/年をとっても強い興味を持てるものをいっこうに発見できない人もいる。/しかし,狭い自己の殻に閉じこもらずに,虚心に外界を観察すれば,きっと,多くの人が,強い興味を持てるものを発見できるのではないだろうか。)

It is quite impossible to guess in advance what will interest a man, but most men are capable of a keen interest in something or other, and when once such an interest has been aroused their life becomes free from tedium.

[n.0041:人生を満たす興味]

 ありとあらゆる事柄に興味を持つには,人生は短かすぎる。しかし,人間の一生(日々)を満たすに足るだけ多くのものに興味を持つことは,良いことである。(★出典
(n.40の「人は,関心を寄せるものが多ければ多いほど,よりいっそう幸福になる機会が多くなり,また,ますます運命に左右されることが少なくなる。」を別の言い方をしたもの)

Life is too short to be interested in everything, but it is good to be interested in as many things as are necessary to fill our days.

[n.0040:多くのものに興味を持つこと]

 人は,関心を寄せるものが多ければ多いほど,よりいっそう幸福になる機会が多くなり,また,ますます運命に左右されることが少なくなる。(★出典
(興味を持てる'もの'(物事)が少ないと,それら少数の'もの'に興味を持てなくなると,その人は不幸になりやすい。/とはいっても,非常に多くの趣味を持っていても,いずれも表面的な,浅い興味のものばかりであれば,何らかの機会に一挙にそれらの多くのものに対する興味を失う危険がある。)

The more things a man is interested in, the more opportunities of happiness he has, and the less he is at the mercy of fate.

[n.0039:幸福の秘訣]

 幸福の秘訣は,こうである。あなたの興味・関心をできるかぎり幅広くしなさい。そうして,あなたの興味・関心をひく'事物'や'人'に対する反応を敵意あるものではなく,できるかぎり友好的なものにしなさい,と。(★出典
(これは多数のホームページ上の格言集で引用されています。/「一文」格言(one sentence aphorism)ではなくなってしまいましたが・・・。)

The secret of happiness is this: let your interests be as wide as possible, and let your reactions to the things and persons that interest you be as far as possible friendly rather than hostile.

[n.0038:努力しないで人を好きになること]

 多くの人びとを無意識かつ努力しないで好きになれることは,おそらく個人の幸福のあらゆる源泉のなかで最大のものであろう。(★出典
(人から嫌われるよりも,好かれたいと思う人が大部分/多くの人間を好きになれるということは,その人にとっても,好かれる人にとっても幸せである/しかし,義務感から好きになろうと努力されてもうれしくない)

To like many people spontaneously and without effort is perhaps the greatest of all sources of personal happiness.

[n.0037:他人に対する友好的な関心]

 人に対する友好的な関心は,深い愛情のひとつの形であるが,欲深で所有欲が強く常に強い反応を求める形はそうではない。(★出典
(親の子供に対する愛情は,他の愛情に比べれば比較的「無私」である/恋愛においては,無私であるように見えて,そうでない場合が多い/相手に対する独占欲は,最初は深い愛情のように見えて,相手もそれに応えるかもしれないが,割合早く束縛と感じられるようになり,破綻し易い)

A friendly interest in persons is a form of affectionateness, but not the form which is grasping and possessive and seeking always an emphatic response.

[n.0036:過大評価と過小評価]

 自分を過小評価する人は,成功するといつも驚くが,これに対し,自已を過大評価する人は,失敗するといつも驚く。(★出典
(自分に自身を持つことと,自分を過大に評価することとは異なる/自分をありのままに正当に評価するのが一番よいが難しい/ラッセル曰く「自分を過小評価していた人が成功した場合の驚きは愉快であるが,自分を過大に評価していた人が失敗した場合の驚きは不愉快である。したがって,不当にうぬぼれないほうが賢明である。ただし,何かやりとげようとするためには控えめ過ぎるのもよくないけれども)

The man who underestimates himself is perpetually being surprised by success, whereas the man who overestimates himself is just as often surprised by failure.

[n.0035:寛容さを増す最善の方法]

 寛容さを増す最善の方法は,真の幸福を享受し,仲間の人間に苦痛を与えることを主な楽しみとしない個人の数を増やすことである。(★出典
(日本社会はしだいに多様性を認める,より寛容な社会になってきているように思われる/しかし,「大衆の声」を隠れ蓑に,余り一般的でない意見を持つマイノリティを,政府やマスコミが抑圧したり非難したりする時がときどきある/個性の強い政治家やテレビの人気キャスターなども,自分の「常識」を過信し,世間一般的でない考え方をする人を押さえつけようとすることがときどきある)

The best way to increase toleration is to multiply the number of individuals who enjoy real happiness and do not therefore find their chief pleasure in the infliction of pajn upon their fellow-men.

[n.0034:生き方の強制]

 若者が年寄りの生き方を--たとえば配偶者をなくした親の再婚に反対するなどして--規制しようとすることは,若い人の生き方を規制しようと企てる年寄り(年輩者)と同じように,まちがっている。。(★出典
(年取った両親は,新たな恋愛などしてもらいたくないと思う若者たち/子供たちは,社会のルールに従順であり,良い子であってほしいと思う親たち/いずれもお互いを独立した一個人と思っていない)

When the young attempt to regulate the lives of the old, as, for example, by objecting to the remarriage of a widowed parent, they are quite as much in the wrong as are the old who attempt to regulate the lives of the young

[n.0033:若者の住む世界]

 若い人たちは,彼らの知っている環境があたかも世の中全体を代表しているかのように思いやすい。(★出典
(若い人たちは経験不足のため,自分のおかれた環境の影響を受け易い/環境はその人に良い影響を与える場合もあれば,悪い影響を与える場合もある/おかれた厳しい環境のためにとても悲観的になる若者もいれば,恵まれた環境におかれて傲慢になる若者もいる/若いうちにいろいろ経験し,世界には多様な人間や多様な考え方があるということをできるだけ早い時期に理解させることは非常に重要であろう/愛国心教育など論外)

It easily seems to the young as if the only milieu with which they are acquainted were representative of the whole world.

[n.0032:不人情?]

 (処世訓4)大部分の人が,あなたを迫害したいといった特別な欲求を抱いているというほど,あなたのことを考えている,などと想像してはいけない。(★出典
(確かに他人を迫害することに喜びを見出す人間は存在する/しかし,感知違いである場合が多い/被害者意識が高ずると・・・)

Don't imagine that most people give enough thought to you to have any special desire to persecute you.

[n.0031:他人に過大な期待をするな]

 (処世訓3)あなたが自分自身に持つほどの大きな関心を他人もあなたに持つと期待してはならない。(★出典
(他人に期待しすぎるとガッカリすることが多い/しかし他人から見ればあなたもその人にとっては他人であり,ガッカリさせていることが少なくないのではないか/他人の振り見てわが振り直せとはよく言ったもの)

Don't expect others to take as much interest in you as you do yourself.


[n.0030:自己評価は過大になりがち]

 (処世訓2)自分自身の長所を過大評価してはいけない。(★出典
(4つの処世訓のなかの2番目/4つの処世訓のなかの2番目/自分が自分を評価するほど他人は評価してくれないのが世の常/しかし多くの場合,自己評価は甘いのが通常/天才の場合は,自己評価だけでなく,他者評価も高いのが普通/ラッセルは言う,「もし,ある人が'時代によって認められない天才'であるとするならば,認められなくても我が道を歩き続けることはまったく正しいことである。しかし,その反対に,もしもその人が,'虚栄心で思い上がっている'才能がない人間であれば,我が道に固執しない方がよい。)

Don't over-estimate your own merits


[n.0029:動機の不純さ?]

 (処世訓1)あなたの動機は,必ずしも自分自身で思っているほど'利他的'ではないということを忘れてはいけない。(★出典
(4つの処世訓のなかの1番目/自分の動機を疑ってみることの大切さ/自己欺瞞に陥っていないか?)

Remember that your motives are not always as altruistic as they seem to yourself.


[n.0028:完璧主義は不幸のもと]

 いかなる人間も,完璧であることを期待すべきではなく,また,完全でないという事実について,不当に悩むべきではない。(★出典
(完璧主義は不幸のもと/それに完璧主義は長続きしない/またややもすると他人に対しても完璧をもとめやすい/もっと肩の力を抜いて

Nobody should expect to be prefect, or be unduly troubled by the fact that he is not.


[n.0027:陶酔を求める心]

 いかなる種類のものであれ,陶酔を必要とするような幸福は,見せかけのものであり,不満足なものである。(★出典
(サッカーを始めとするスポーツに対する過度な熱狂,常に'興奮'と'気晴らし'を追い求める心性,大きな天災・人災さえも・・・,マスコミはそういった人間の気持ちや欠点を利用する,9.11,仮想の敵やスケープ・ゴードをやっつけろのスローガン,右も左も真ん中も)

The happiness that requires intoxication of no matter what sort is a spurious and unsatisfying kind.


[n.0026:内的調和]

 合理性は主として内的な調和から成り立つものである以上,内的調和を達成した人は,内面の葛藤によって絶えず邪魔されている人よりも,世界の見方においても,外的な目的を達成するためのエネルギーの使い方においても,よりいっそう自由である。(★出典
(情緒や感性を重視し,理性や合理主義を非難する人々/理性や合理主義についての決め付けや無理解?/情熱的な恋愛,親としての愛情,友情,慈悲心,科学や芸術に対する献身などの中には,理性が減じたいと思うものは何ひとつない,と主張するラッセル/考えるのが面倒な人,理性的に人を説得するのが面倒な人は,理性や合理主義を軽視する。議論にまけそうになると・・・/)

On the contrary, since rationality consists in the main of internal harmony, the man who achieves it is freer in his contemplation of the world and in the use of his energies to achieve external purposes than is the man who is perpetually hampered by inward conflicts..


[n.0025:人格の分裂]

 人格の分裂ほど,幸福のみならず能率を減らすものはない。(★出典
(大衆の面前では,'偉い人たち'は思ったことを言えない/高い地位や高給は,思ったことを言えない「我慢代?」/政治家にとって嘘は必要悪?/個人(自分)や家族の幸福よりも権力の方が魅力的?/他人に抜きんでることが一番幸福?/しかしそのような,他人との格差に満足する態度は,社会に対してだけでなく,その人自身にとっても良い結果をもたらさないのではないか?)

Nothing so much diminishes not only happiness but efficiency as a personality divided against itself.


[n.0024:良心の由来?]

 合理的な確信に達したときには,その確信について十分考え,その帰結に徹底的に従い,新しい確信と矛盾するような信念が別の方法で生き残ってはいないかどうか,自分の心の中を捜してみる必要がある。(★出典
(人は皆,多くの誤解や迷信や思い込みを持っている/大人になってから,小さい頃からの思い込みが間違っていることに気がつくことが時々あり,気づいて恥ずかしくなったり,笑ったりする/そのような新しい確信と矛盾することはたくさんあるはずである/しかし人はそれ以上考えることなく,多くの迷信や誤解の上に安住する)

When a rational conviction has been arrived at, it is necessary to dwell upon it, to follow out its consequences, to search out in oneself whatever beliefs inconsistent with the new conviction might otherwise survive.


[n.0023:良心の由来?]

 自らの理性が悪くないと告げる行為について,あなたが後悔を感じはじめるようなときには,いつでも,後悔の感情の原因を調べ,その不合理性について,細部においてまで確信をもつべきである。(★出典
(幼少期に自分の世話をした母親や乳母の信じていた愚かな道徳感がしらないうちに植えつけられ・・・/不合理なタブーや迷信を子供時代に植えつけられ・・・/意識と無意識との関係)

Whenever you begin to feel remorse for an act which your reason tells you is not wicked, examine the causes of your feeling of remorse, and convince yourself in detail of their absurdity.


[n.0022:良心の由来?]

 年をとるにつれて,しだいに,自分の道徳規範がどこから来たものか,それに違反した場合の罰は元来どんなものであったか忘れていったが,その道徳規範を捨ててしまうこともなかったし,またそれを犯せば何か恐ろしいことがわが身に降りかかりやすいと考えることもやめなかった。(★出典
(自分の倫理観・道徳観や良心の由来は?/母親の躾の影響は大きい/後年母親の考え方を否定しても,意識下では残っていることが多い)

Gradually as he grew older he forgot where his moral code had come from and what had originally been the penalty for disobeying it, but he did not throw off the moral code or cease to feel that something dreadful was liable to happen to him if he infringed it.


[n.0021:良心とは?]

 '良心'は世界の異なった国々で,異なった行為を命ずるものであることを,さらに,大ざっぱに言えば,どこへ行っても種族の慣習と一致するものであることを,私たちは知っている。(★出典
(良心? 24時間愛は'地球を救う'? それもいいけど,年に2,3回だけそんな気になるだけで普段'地球に悪いことをやっている'ようでは・・・。罪滅ぼし? 時々そんな気分になれば,免罪符になる?/愛国(心)教育よりも,相互理解のための教育をもっとやるべき)

We know that conscience enjoins different acts in different parts of the worid, and,that broadly speaking it is everywhere in agreement with tribal custom.


[n.0020:'妬み'の原因]

 'ねたみ'は,実際のところ,一部は道徳的,一部は知的な悪徳の一形態であって,その本質は,決して'もの'を'それそのもの'として見ず,他との関係において見ることにある。(★出典
(比較宗教学,比較文学等,学問の世界においても,他のものと比較して考えることは,有益な方法(論)である/しかし,他人(の持ち物,容貌,その他)に対する'妬み'は,他との比較でものを見る習慣の弊害であり,不幸の大きな原因となる)

Envy, in fact, is one form of a vice, partly moral, partly intellectual, which consists in seeing things never in themselves, but only in their relations.


[n.0019:他人と比較する習慣]

 他人と比較してものを考える習慣は,致命的な習慣である。(★出典
('競いあうこと'は,良い面と悪い面がある/限られたパイを奪い合う競争(所有的衝動の助長)はよくないが,純粋な学問芸術活動のように,競争しても資源が減らない競争(創造的衝動の助長)は良い/前者の競争を促進し,格差を大きくしようとする政界や財界

The habit of thinking in terms of comparisons is a fatal one.


[n.0018:妬み深い人の不幸]

 'ねたみ'深い人は自分が持っているものから喜びを引き出すかわりに,他人が持っているものから苦しみを引き出す。(★出典
(嫉妬を始めとした妬み(ねたみ)は不幸の主要な原因の一つ/客観的に見たら幸福なはずだと周囲から思われる人も,ねたみにより,自分で自分を不幸にしてしまう)

The envious person derives pain from what others have, instead of deriving pleasure from what he has.


[n.0017:興奮への欲求]

 興奮への欲求も,限度を越える場合は,性格がひねくれているか,あるいは,何か本能的に満たされないものがあるか,いずれかの徴候である。(★出典
(興奮や強い刺激を求める現代人/過度な興奮を求めるのは,日常生活あるいは仕事がつまらないから?/スポーツなどに対する興奮はまだよいが,大きな事件が起こると興奮=喜びを感じるようになってしまったら・・・)

Desire for excitement, when it goes beyond a point, is a sign either of a twisted disposition or of some instinctive dissatisfaction.


[n.0016:神経衰弱の兆候]

 神経衰弱が近づいた徴候の一つは,自分の仕事は非常に重要であり,休暇をとったりすれば種々の災難をもたらすことになる,と思いこむことである。(★出典
(自己を過大評価する人間の不幸/仕事中毒の原因は?/自分の仕事に対する自己評価と他人による評価のギャップ/神経衰弱の兆候?)>

One of the symptoms of approaching nervous breakdown is the belief that one's work is terribly important, and that to take a holiday would bring all kinds of disaster.


[n.0015:自己にとらわれない心]

 自己を超越するものに思考と希望を集中できる人は,人生の普通の悩みごとの中に,全くのエゴイストには望めない,ある種の安らぎを見いだすことができる。(★出典
(自己中心的な人間(エゴイスト)や自己を過大評価する人間の不幸/自己を客観視できる人間は極端な不幸に陥らない/自分を超えるものの視点で(ただしラッセルの場合は神の視点ではない)世界や自己をみられる人間は幸福)

The man who can centre his thoughts and hopes upon something transcending self can find a certain peace in the ordinary troubles of life which is impossible to the pure egoist.


[n.0014:実りある退屈]

 '実りある退屈'から逃げることで,別のより悪い種類の退屈の餌食になる。(★出典
(退屈しのぎや時間つぶしの娯楽/話題になりそうなものなら何でも,視聴者や読者が喜びそうな取り上げ方をするマスコミ/刺激や興奮を求める現代人/実りある退屈とは?) >

In flying from the fructifying kind of boredom, they fall a prey to the other far worse kind.


[n.0013:目的の追求のためには・・・]

 何らかの真面目かつ建設的な目的を持っている青少年は,目的の達成の途上で必要だとわかれば,自主的に多くの退屈に耐えるだろう。((★出典
(退屈の原因/受動的な人間の悲劇/建設的な目的をもっている青少年(人間)は,追求する目的のために必要な退屈は我慢できる/創造性のない人間の不幸/所有的衝動を可能な限り少なくし,創造的衝動を最大化するのが最も幸福かつ望ましい人間の姿だと考えるラッセル)

A boy or young man who has some serious constructive purpose will endure voluntarily a great deal of boredom if he finds that it is necessary by the way.


[n.0012:退屈は無価値か?]

 偉大な本は全て退屈な部分を含んでおり,偉大な生涯は(これまで)全て退屈な期間を含んでいた。(★出典
(現代人はてっとりばやく楽しみを得るためにベストセラーの手を出す人が多い/しかしベストセラーで百年後も読まれる本はほとんどない/古典は容易に理解できない部分があるため敬遠されがち/しかし読解力が高まり,古典が理解できるようになれば一生の宝になりうる)

All great books contain boring portions, and all great lives have contained uninteresting stretches.


[n.0011:退屈に耐える力]

 退屈に耐える力をある程度持っていることは,幸福な生活にとって不可欠であり,若い人たちに教えられるべき事柄の一つである。(★出典
(何でも与える親もいれば,子供をほったらかしにする親もいる/いずれも,子供が自立・自律できるような躾や教育はしない/時間の有効な使い方を教えない親/退屈に我慢できない子供たち/刺激と興奮を求める人々・社会)

A certain power of enduring boredom is therefore essential to a happy life, and is one of the things that ought to be taught to the young.


< [n.0010:刺激を求める現代人]

 過剰に興奮に満ちた生活は,心身を消耗させる生活であり,そこでは,快楽の必須の部分と考えられるようになったスリルを得る(←与える)ために,絶えずより強い刺激が必要となる。(★出典
(刺激や興奮を求める現代人/しだいにより強い刺激でないと満足しなくなる/視覚だけでなく,聴覚も,味覚も・・・,いつのまにか感覚が麻痺/心の平穏の大切さ)

A life too full of excitement is an exhausting life, in which continually stronger stimuli are needed to give the thrill that has come to be thought an essential part of pleasure.


[n.0009:退屈の恐れ]

 私たちは,先祖ほど退屈していないが,先祖よりもより退屈を恐れている。((★出典
(退屈を我慢できない心/興奮の追及/精力的・活動的な生活の賛美/人類の罪の少なくとも半分は,退屈を恐れることに起因している?)

We are less bored than our ancestors were, but we are more afraid of boredom.


[n.0008:退屈の定義]

 '退屈'は,本質的には,事件を望む気持ちのくじかれた状態をいい,事件は必ずしも愉快なものでなくてもよく,'倦怠の犠牲者'にとっては,今日と昨日を区別してくれるような事件であればよい。((★出典
(人の不幸を喜ぶ人間性/それは「退屈」が原因の1つ/戦争さえも戦闘地域が海外であれば・・・;しかし戦争が長引くと厭戦気分が大きくなり,早く戦争が終わってほしいと願う人間の身勝手さ,思慮のなさ/退屈と興奮の意味合い)

Boredom is essentially a thwarted desire for events, not necessarily pleasant ones, but just occurrences such as will enable the victim of ennui to know one day from another.


[n.0007:成功は幸福の条件?]

 私が主張したいのは,成功は幸福になるための一つの要素にしかなりえず,成功を得るために他の要素がすべて犠牲にされたとすれば,あまりにも高い代価を支払って手に入れたことになる,ということである。((★出典
(何をもって「成功」と言えるか?/「成功」は幸福のため? それとも自己満足のため? あるいは虚栄心を満足させるため?/「勝ち組」だと思ったら,自分に負けた「負け組」だった?)

What I do maintain is that success can only be one ingredient in happiness, and is too dearly porchased if all the other ingredients have been sacrificed to obtain it.


[n.0006:踏み車?]

 「人びとは,'逃げ場のないメカニズム'にしっかり捕まっているのではなく,'踏み車'を踏んでいるのであり,いつまでもそれをやめないのは,踏み車で自分を高いレベルに引き上げることはできない」という事実を認識している人がほとんどいないように思われるのは,非常に奇妙なことである。((★出典
(多忙な人が偉い,偉い人は多忙であるという思い込み/軌道を外れることの恐怖/幸福な人生とは?)

It is very singular how little men seem to realise that they are not caught in the grip of a mechanism from which there is no escape, but that the treadmill is one upon which they remain merely because they have not noticed that it fails to take them up to a higher level.


[n.0005:恋愛の価値]

 恋愛は,協力を生み出す感情の,第一のそして最も一般的な形であって,いかなる程度であっても,恋愛を経験したことのある人ならば,自分の最高の幸福(善)が愛する人の幸福(善)とは無関係であるとするような哲学には,満足しないだろう。(★出典
(恋愛経験の重要性/自我の固い殻をこわす恋愛/恋に恋する恋愛と,心の底から湧き出る感情としての恋愛/恋愛の生物学的役割)

Love is the first and commonest form of emotion leading to cooperation, and those who have experienced love with any intensity will not be content with a philosophy that supposes their highest good to be independent of that of the person loved.


[n.0004:相互にほめあう社会]

 ほめられる価値があってもなくても,身近に必ずほめてくれる人がいることは,非常にうれしいことである。((★出典
(自分を認めてもらいたいという欲求/孤立することの恐怖)

The habit of looking to the future and thinking that the whole meaning of the present lies in what it will bring forth is a pernicious one.


[n.0003:悪しき思考習慣]

 将来に期待して,現在の意味はすべて未来の(もたらすものの)中にある,と考える習憤は,有害である。(★出典
(有害な思考習慣)

The habit of looking to the future and thinking that the whole meaning of the present lies in what it will bring forth is a pernicious one.


[n.0002:不幸な人間の典型]

 不幸な人間の典型は,若いときに何らかの正常な満足を奪われたため,その一種類の満足を他の何よりも価値があると思うようになり,それゆえ,自分の人生に一方的な方向性を与え,その目的に関連した活動ではなく,その目的の達成のみをまったく不当に強調するようになった人である。(★出典
(有益なこだわりと無益なこだわ/幅広い好奇心と人間の幸福/バランス感覚の重要性)

To discover a system for the avoidance of war is a vital need for our civlisation; but no such system has a chance while men are so unhappy that mutual extermination seems to them less dreadful than continued endurance of the light of day.


[n.0001:人間性と戦争]

 人びとが不幸なあまりに,日中(の光)のまぶしさを耐え続けるよりも(現実を直視し耐え続けるより),'相互殺戮'のほうが恐ろしくないと思われるうちは,戦争を回避するための(組織的な)方法を発見する機会はない。(★出典
(富める国と貧しい国/過度の自由競争賛美/個人の幸福よりも美しい国(愛国心)を強調/★相互殺戮(jolly)

To discover a system for the avoidance of war is a vital need for our civlisation; but no such system has a chance while men are so unhappy that mutual extermination seems to them less dreadful than continued endurance of the light of day.