自殺と人命尊重 the sacredness of human life?

【 バートランド・ラッセル(Bertrand Russell)の言葉 r366-c159】

我々は自殺の問題をその当否よりも,人命の尊さに関連づけて考える傾向がある。しかし,この’人命尊重’という言葉を真面目にとるのは不当(ルール違反)だと思う。なぜなら人命の尊重を真剣に考える人は,戦争を非難しなければならないことになるからである。今の世の中で戦争が我々の制度の一部分になっている限り,惨めな人生を送り自殺までも企てなければならない不幸な人たちに対して人命尊重を引き合いに出すことは,全くの偽善である。
The subject of suicide is apt to be considered not on its merits but in relation to what is called the sacredness of human life. I find, however, that it is illegal to take this phrase seriously, since those who do so are compelled to condemn war. So long as war remains part of our institutions it is mere hypocrisy to invoke the sacredness of human life against those unfortunates whose misery leads them to attempts suicide.
出典:Illegal? , Mar. 9, 1932. In: Mortal and Others; Bertrand Russell’s American Essays 1931-1935, v.1 (1975)
https://russell-j.com/ILLEGAL.HTM#r366-c159
CHRISTIA
(Illustration from: Bertrand Russell’s The Good Citizen’s Alphabet, 1953)
[寸言]
“自殺” についての考え方・感じ方は,国・地域や文化によりかなり異なっている。日本社会においては,自殺の理由がなんであれ,自殺した人間に対して憐憫の情を覚える人が多いが,欧米特に米国においては,自殺未遂者に対する目は厳しいようだ。
西洋社会(キリスト教社会?)にあってラッセルのような見方をする人は多くないようだが,日本人は共感する人が多いのではないだろうか。人命の尊重を最重要だと主張し,自殺を潔しとしない人や社会は,(大量死をもたらす)戦争及び戦争の危険性をます軍拡競争に対しては猛反対をしなくてはならないはずである。そうでないとしたら,ラッセルが言うように その人や社会は ‘偽善的である’ と言わざるを得ない。