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バートランド・ラッセル 私の哲学の発展
第10章 目次(松下彰良 訳)
* 原著:My Philosophical Development, by Bertrand Russelll (London; George Allen & Unwin, 1959)
第10章 ウィトゲンシュタインの衝撃 イントロ累積版
- 『プリンキピア・マテマティカ(数学原理)』は当初、いくらか好意的でない受け取られかたをされた。
- ブラウエルに率いられている直観主義者の理論は、もっと重大な議論を必要とする。
- 争点(issue)は上の数学の例に見られるよりもはるかに一般的なものである。
- ウィトゲンシュタインの学説(doctrines)は私に深い影響を与えた。
- 1918年の始めに、私はロンドンで連続講義をし、それは後に雑誌「モニスト(Monist)」に1918年から1919年に渡って発表された。
- 恐らく、『論考』の哲学における基本的な学説は、命題(と)はその命題が主張する事実の画像(picture 写し絵)であるという説(注:模写説)であろう。
- 彼(ウィトゲンシュタイン)が構造の重要性を強調したのは正しかったと私は今でも考えているが、真なる命題は当該事実の構造を再現しなければならないという学説については -私は当時それを受けいれたが- 今では非常に疑わしいと考えている。
- 次に、ウィトゲンシュタインが同一性(identity)について言いたかったこと(←言わなければならなかったこと)に移る。
- ウィトゲンシュタインは言う。)「大雑把に言えば、2つのものについて、それらは同一であると言うことは無意味であり、一つの物について、それがそれ自身と同一であると言うことは、何も言わないことである」(『論考』5.5302 および 5.5303)。
- たとえば、数2の定義をとってみよう。
- 非常に重要なもう一つの点(point 要点/主張)がある。
- 同じ種類の問題が関連する(あてはまる)もうひとつの事項(respect 点)は、「無限の公理」(the axiom of infinity')と私の呼んだものである。
- ウィトゲンシュタインは、それらがもし真ならば非常に重要である、二つの一般的原理を公表した(announced)。
- ウィトゲンシュタインの論拠(議論)は、「 A が p を信ずる」は p の関数 (function)ではなく、A が pという命題を言いあらわすところの語 (words)の関数、あるいは A の信念(信ずること)をなしているその人の何らかの身体的状態の関数、である、ということである。
- 上の二つの原理に関して私の到達した結論は次のようなものであった。
- 『数学原理』の第二版(1925年刊)において、私はウィトゲンシュタインのいくつかの原理(doctrines 根本的な考え)について触れた。
- さて(now 今や),この還元公理の主張内容は何であるか、また、なぜそれは必要と思われるかについて、説明することを試みなければならない。
- 『プリンキピア・マテマティカ(数学原理』の初版において、我々(ラッセルとホワイトヘッド)は、この公理(還元公理)を受け入れる理由を次のように述べている。
- 『プリンキピア・マテマティカ(数学原理)』第二版において、我々は次のように言っている。
- 『プリンキピア・マテマティカ(数学原理)』の第二版が出て間もなく、還元公理(還元可能性の公理)の問題はラムジ一(Ramsey, Frank Plumpton, 1903-1930:ケンブリッジ大卒の数学者、哲学者)によって、二つの重要な論文 -(即ち)「数学の基礎」(1925年)と「数理論理学(数学的論理学)」(1926年)とにおいて、とりあげられた(taken up by)。
- 彼(ラムジー)は同様の見方を命題関数の概念の変更に適用した。
- 命題関数」の概念に関するラムジーの新しい解釈が妥当であるかどうか(validity)について、自分の考えをはっきりさせることは大変難しい、と私は思っている(感じている)。
- ラムジーの仕事(work)が決定的に正しいと認められるべきだと私には思われるところの、もうひとつの問題がある。
- ラムジーがウィトゲンシュタインの弟子として執筆し、(ウィトゲンシュタインの)神秘主義(的側面)以外の全てにおいてウィトゲンシュタインに従っているが、彼(ラムジー)が諸問題に立ち向かうやり方はウィトゲンシュタインとは驚くほど異なっている。