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バートランド・ラッセル『宗教と科学』(松下彰良・訳)
* 原著:Religion and Science, by Bertrand Russell (London; George Allen & Unwin, 1935)
8章 宇宙の目的 イントロ累積版
- 現代の科学者は,宗教に対し敵対的でないかあるいは無関心でない場合,旧い教義の残骸の中で生き残ることができると彼らが考える一つの信念(belief 信条) -即ち,宇宙の目的への信念((宇宙には何らかの目的が存在しているとの信念)- にしがみついている(cling to 固執している)。
- これら3つの形態の全てが、既に言及したBBC(英国放送協会)の談話(talks 形式張らない講演)を収録した本のなかに表われている。
- バーミンガム司教は,既に見たように,汎神論を斥ける。
- 目的という概念(The conception of purpose)は,職人(artificer 熟練工)に当てはまる自然概念である。
- 宇宙の目的説に関する汎神論的及び発現的形態は,このような反対(宇宙の目的に関する有神論的形態に対するような反対)にさらされる度合は少ない。
- 彼はこう言っている。「もし我々が機械論的な解釈(mechanistic interpretation 力学的/物理的解釈)を生命についての我々の哲学の唯一の基礎としようとするなら,我々の伝統的な宗教上の信念及びそれ以外の多くの日常的信念を捨てなければならない」。
- この段階から(From this point),我々は単一の人格から神へと次のステップを歩む準備ができる。
- 生物学の化学や物理学に対する関係についてのホールデン教授(1860-1936)の見解は,今日では大部分の専門家たちによって支持されてはいない。
- 生理学と心理学との関係についての問題はもっと難しい。
- 前の段落の最初にあげた二つの問題に戻ることにしよう。
- 心理学という一つの独立した科学の可能性については、ましてや(even less),現在のところ,語ることはできない。
- けれども,ホールデン教授の心理学に関する見解は,もっと明確なことを言うことができるより狭義の問題(issue 争点/論点)を生じさせる。
- このような見解には魅力的なものがあるが,それを真理と見なす理由は私には分らない。
- 空間に関しても,問題(やっかいなこと)は似ているが,(時間の場合よりも)もっと複雑である。
- ヘーゲルに従っている人たちが皆そうであるように,ホールデン教授は,何ものも他のものから実際には分離していない(独立していない)ことを示すことを切望している(したがっている)。
- 宇宙の目的に関する汎神論的理論(汎神説)は、有神論的理論(有神説)と同様に -いくらか異なった形ではあるが- 経時的(時間的)進化の必然性を説明する難しさで苦しんでいる(苦労している)。
- 私が次に考察する(神による宇宙の創造目的に関する)「発現(創発)」説は,このような困難を回避し,時間の実在を強く支持している。
- アレキサンダー教授の見解とベルグソンの「創造的進化」との間には,密接な類似性がある(よく似ている)。
- 多種多様な難点(困難)があるため、発現的進化の哲学(訳注:ベルグソンでは「創造的進化」)は不十分なもの(不満足なもの)になっている。
- とにかく,この議論(注:神性が将来現われて来ることを擁護するための進化論的議論)は,とても(並外れて)貧弱である。
- 宇宙の目的一般については,そのいかなる形態のものに置いても,なされるべき二つの批判が存在している。
- (仮に地球が1億年後に消滅するとしても)一億年もあれば,終末への準備をする時間もしばらくあるので,その間に,天文学もロケット打ち上げ技術も両方ともかなり進歩していると期待してよいだろう(
- この(ジーンズの)見解は,公平かつ偏見なしに,科学によって提示された(ものとしての)代替案を述べていると,私は考える。
- 今や私は,宇宙の目的に関する議論における最後の問い -即ち,「これまでに起きてきたことは宇宙の善い意図を保障する証拠だろうか?
第9章 科学と倫理(学)