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バートランド・ラッセル 宗教と科学 第8章(松下 訳)- Religion and Science, 1935, by Bertrand Russell

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第8章 宇宙の目的 n.9 - 生理学と心理学との関係


ラッセル英単語・熟語1500
 生理学と心理学との関係についての問題はもっと難しい。そこには二つの別個の問題がある。(即ち)我々(人間)の身体の行動生理学的原因にだけ基づくと考えることができるであろうかという問題と,心的現象(精神現象)とそれと同時に起こる身体の行為との関係はどういうものであるかという問題(の2つ)である(訳注:荒地出版社刊の津田訳では「physiological causes」を「生物学的原因」と誤訳)。一般に観察できるのは身体の行動だけである。我々の思考(考えていること)は他者によって「推理される」かも知れないが,「認知できる」のは我々自身(自分自身)によってのみである(訳注:荒地出版社刊の津田訳では「 our thoughtsphysiological causes」を「我々の思想」と訳出)。これが,少なくとも,常識が主張するだろうことである。理論的に厳密に言うと,我々は身体行為(そのもの)を観察することはできず,(可能なのは)にそれらの行為が我々(人間)に与える一定の影響を観察することができるだけである。(訳注:観察対象の人に太陽などの光があたり、それが反射して観察者の目に到達し、それが網膜に達し、そこから脳に伝わり、そこで再構成されて認識行為が起こることを言っている。) (自分たち以外の)他者が同時に観察するもの類似しているかもしれないが,我々(自分たち)が観察することとは,常に多少とも相違しているだろう。このような理由及びその他の理由から,物理学と心理学との間にあるギャップ(断絶)は,以前考えられていたほど大きくない。物理学は,我々が一定の状況において見るだろうことを予測すること(科学)と考えてよいだろう。そうして,そういう意味においては,我々が見るということは「心的(精神的)」な事象であるので,それは心理学の一部門である。このような視点は,経験的に検証できる主張だけをしたいという欲求(願望)によって,-(客観的とは言いながら)検証は常にある(特定の)人間による観察であり,従って,心理学が考察するような出来事であるという事実と相まって(と結びついて)- 現代物理学の前面に現われてきた。しかし,そのようなことは全て,これら二つの学問(注:物理学と心理学)の実際面に関することというよりも,両者の哲学に属することである。それらの取扱う素材(subject-matters)の友好的接近(rapprochement)にもかかわらず,それら(両者)の(取り扱う)手法(technique)はやはり異なったままである。

Chapter 8:Cosmic Purpose , n.9


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The question of the relation between physiology and psychology is more difficult. There are two distinct questions ; Can our bodily behaviour be supposed due to physiological causes alone? and what is the relation of mental phenomena to concurrent actions of the body? It is only bodily behaviour that is open to public observation ; our thoughts may be inferred by others, but can only be perceived by ourselves. This, at least, is what common sense would say. In theoretical strictness, we cannot observe the actions of bodies, but only certain effects which they have on us ; what others observe at the same time may be similar, but will always differ, in a greater or less degree, from what we observe. For this and other reasons, the gap between physics and psychology is not so wide as was formerly thought. Physics may be regarded as predicting what we shall see in certain circumstances, and in this sense it is a branch of psychology, since our seeing is a "mental" event. This point of view has come to the fore in modern physics through the desire to make only assertions that are empirically verifiable, combined with the fact that a verification is always an observation by some human being, and therefore an occurrence such as psychology considers. But all this belongs to the philosophy of the two sciences rather than to their practice ; their technique remains distinct in spite of the rapprochement between their subject-matters.
(掲載日:2019.1.15/更新日: )