ラッセル『私の哲学の発展』(松下彰良・対訳)

My Philosophical Development, by Bertrand Russelll (London; George Allen & Unwin, 1959)


総目次

第8章 数学原理-その数学的側面 イントロ累積版

  1. ホワイトヘッドも私も『プリンキピア・マテマティカ(数学原理)』がただ哲学的見地からのみ見られたことに失望した。>

  2. まず哲学にも数学にも同程度関係する一つの問題(matter 事柄)、即ち関係(relations)の重要性から始めよう。

  3. 当時私は、関係(というもの)をほとんど全く内包(注:intensiions ある概念が適用される範囲すなわち外延に属する全てのものに共通な属性)として考えていた。

  4. これら全ては、我々(ラッセルとホワイトヘッド)が『プリンキピア・マテマテカ』において展開した関係の算法(the calculus of relations)の哲学的背景であった。

  5. 関係の種類が異なればそれらの用途も異なる。

  6. 非常に重要な関係の2番めの種類は、二つの集合の間に相関を確立する(対応付ける)もの(種類)である。

  7. 関係の第3の重要な型は系列(注:series 数学においては「数列」)を生じさせる関係である。「系列」という語は古く(からあって)よく知られているが、それに正確な意味を与えたのは私が初めてであると思う。

  8. 私が若かった時、数学は数と量の学問、あるいは(alternatively 別の言い方では)数と計量の学問である、と言われた(教えられた)。

  9. 乗算(注:multiplication 乗法、掛け算)を因数が無限数(になる)まで拡張することは、いわゆる「選択」(selectionsn)によって達成される(is effected 成り立つ)。

  10. 乗法(掛け算)のこの定義を採用した後,我々(注:ラッセルとホワイトヘッド)は予想外の困難に直面した。

  11. 当該集合群(関係する集合/問題となる集合の集まり)が一つも空集合を含んでいないらば、各集合からびとつの要素(メンバー)を選び出すことは可能でなければならない,ということは自明であると考える人もある。

  12. 論理学における選択の理論はいかなる点においても「数」の概念には依存しておらず、『プリンキピア・マテマティカ(数学原理)』では、私たち(ラッセルとホワイトヘッド)は、その理論を数の定義の前に展開した。

  13. 祖先関係の全理論は、非常に重要なものであって、単に数との関係において重要であるだけではない。

  14. 関係算術における基本的定義は、前述した「順序的類似性」(ordinal similarity)あるいは(即ち、言い換えれば)「相似性」(likeness)の定義(と同じ)である。

  15. さて(now 今や)我々は一つの関係Pの関係数を、Pに順序的に類似している諸関係の集合と定義する。

  16. 順序数(Ordinal numbers )は関係数の(一つの)部分集合(a sub-class)である。

  17. 関係算術の形式的法則(formal laws)の証明に際して,我々はしばしば系列の系列の系列を扱う機会がある。

  18. 二つの関係数が順序的に類似している場合、それらの関係数は同じ「構造」を成立させる(generate 生じさせる,生む)と言うことができる。

  19. もうびとつ別の例は(別の例をあげると)構造の概念を明瞭にするのに役立つかも知れない。

第9章