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バートランド・ラッセル 私の哲学の発展(松下 訳)- My Philosophical Development, 1959, by Bertrand Russell

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第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.2 - 関係の論理学において重要な事

 まず哲学にも数学にも同程度関係する一つの問題(matter 事柄)、即ち関係(relations)の重要性から始めよう。ライプニッツに関する私の著書(注:A Critical Exposition of the Philosophy of Leibniz, 1900)の中で、私は、実体とその属性とから成る事実及び主語と述語とからなる命題、に対して(as opposed to ~と対立するものとして)、関係的な事実関係的な命題とが重要であることを強調した。私は、哲学においてと同様に数学においても、関係に対する偏見が、悪い結果を生んで来ていたことを発見した(のである)(訳注:みすず書房刊の訳書で、野田氏は「その後私は、・・・偏見が悪い結果を生んでいることを見出した」と訳出している。原文にない「その後」という言葉を補っているがこれは誤訳。ラッセルは、偏見が悪い結果を生んできたことを発見し、1900年に出版した『ライプニッツの哲学』で述べたわけであり、「その後(出版後)」に発見したわけではない。原文 I found that the prejudice against relations had had ... にある,過去形(found)と過去完了形(had had)との違いを野田氏は無視している!) G.ブール(注: George Boole, 1815- 1864:イギリスの数学者・哲学者。ブール代数で有名)数学的論理学は、ライプニッツの失敗に終った(注:abortive 早産の/打ち切られた)企てと同様に、集合の包含関係(class-inclusion)に関係したものであり、三段論法(syllogism)の展開にすぎなかった。パース(注: Charles Sanders Peirce、1839-1914:アメリカの哲学者、論理学者、数学者、科学者で、プラグマティズムの創始者)関係の論理学を展開したが、関係を対の集合(a class of couples)としてとり扱った。これは技術的に可能ではあるが、自然な形で人々の注意を重要な事柄に向けさせなかった。関係の論理学において重要な事(柄)は、集合の論理学とは異なっており、関係についての私の哲学上の見解は、後にきわめて有用であることが判明した事柄を、私が強調する手助けとなった。

Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.2


ラッセルの言葉366
I will begin with a matter which concerns philosophy and mathematics in equal measure, namely, the importance of relations. In my book on Leibniz I had emphasized the importance of relational facts and propositions as opposed to facts consisting of substance-and-attribute and propositions consisting of subject-and-predicate. I found that the prejudice against relations had had bad consequences in mathematics as well as in philosophy. Boole's mathematical logic, like Leibniz's abortive attempts, was concerned with class-inclusion and was merely a development of the syllogism. Pierce had developed a logic of relations, but had treated a relation as a class of couples. This is technically possible, but does not direct attention naturally toward what is important. What is important in the logic of relations is what is different from the logic of classes, and my philosophical opinion on relations helped to make me emphasize what turned out to be most useful.
(掲載日:2019.09.26/更新日: )