第8章 「数学原理-その数学的側面」 n.7 - 系列(順序を備えた項の集合)関係の第3の重要な型は系列(注:series 数学においては「数列」)を生じさせる関係である。「系列」という語は古く(からあって)よく知られているが、それに正確な意味を与えたのは私が初めてであると思う。(一つの)系列とは、次の3つの性質をもつ関係から生ずる順序を備えた(諸)項の集まり(集合)である。すなわち、(a) それは非対称的(asymmetrical)でなければならない-言いかえると、x が y に対してその関係をもつとき、y は x に対してその関係をもたない。 (b) それは移行的(transitive 推移的)でなければならない、言いかえると、もし x が y にその関係をもち、y は z にその関係をもつなら、x は z に対してその関係をもたなければならない。 (c) それは連関的(connected)でなければならない、言いかえると、x と y がその関係の範囲において任意の二つの異なる項であるとすると、x が y に対してその関係をもつか,あるいは y がx に対してその関係をもつか(のいづれか)でなくてはならない。 一つの関係がこれら3つの特性をもつならば、その関係は、その関係の範囲にある諸項を一つの系列(注:数学の場合は「数列」)に配列する(ことになる)。 これらの全ての特性は人間関係によって容易に例示できる。たとえば(Thus 文語的)「夫(である)」という関係は非対称的である(訳注:上記の1番めの特性)。なぜならAがBの夫であれば、BはAの夫ではないからである。これに反して、「配偶者(である)」(spouse)という関係は対称的である。「祖先」という関係は移行的(推移的)である(訳注:上記の2番めの特性)。なぜならAの祖先の祖先はAの祖先であるから。しかし「父」という関係は非移行的である。「祖先」という関係は系列関係に必要な3つの特性のうち2つを持っているが、第3の連関的であるという特性をもっていない。なぜなら任意の二人の人間をとったとき必ず一方が他方の祖先であるとは言えないからである(訳注:たとえば、二人は同じ祖先を持つ兄弟かも知れない。他方、たとえば、常に息子が父の後を継ぐある王家の王位継承を考えると、この王家の系譜に範囲を限った場合の祖先関係は連関的であり、従って、この王家の王達はびとつの系列を形成する(ことになる)。 上記の3つの種類の関係は、論理学と通常の数学との中間領域(transitional region 遷移領域)において最も重要な関係である。 |
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.7
All these properties are easily illustrated by human relationships. Thus the relation husband is asymmetrical, because if A is the husband of B, B is not the husband of A. Spouse, on the contrary, is symmetrical. Ancestor is transitive, because an ancestor of an ancestor of A is an ancestor of A; but father is intransitive. Ancestor has two of the three properties required of a serial relation, but not the third, that of being connected, because it is not the case that of any two different people, one must be an ancestor of the other. On the other hand, if one considers, for example, succession in a royal family in which sons always succeed to fathers, the relation ancestor confined to this royal line is connected, and therefore the kings concerned form a series. Relations of the above three kinds are those that are of most importance in the transitional region between logic and ordinary mathematics. |