バートランド・ラッセル『権力』（松下彰良・訳）
* 原著：Power; a new social analysis, by Bertrand Russell (London; George Allen & Unwin, 1938)総目次
第７章 革命的な権力 イントロ累積版
- 我々が（これまで）見てきた伝統的な制度は，２つの方法で破綻する可能性がある。
- 私は，革命的な権力（革命をもたらす権力）について，以下の４つの例を考察することによって，例証（説明）してみよう。
- 権力との関係において，キリスト教教義のなかで最も重要なものは，「人は人に従うよりもむしろ神に従うべきである」という言葉であった。
- 我々は人に従うよりもむしろ神に従うべきであるという原則は，キリスト教徒によって二通りに解釈されてきた（解釈されてきている）。
- ローマ皇帝コンスタンティヌス一世の（キリスト教への）改宗は教会と国家との間に調和（和合）をもたらすだろうと，当時想った人がいたかもしれない。
- 紀元４世紀末のカトリック教会と（キリスト教異端派の）アリウス派の帝国との争いの性格（本質がどのようなものであったか）は，紀元385年の（ヴァレンティニアヌス１世の妻の）ジャステイナ皇后と聖アンブロジウス（注：ミラノの大司教の聖アンブロース）との間の闘争に例示されている（両者の争いを見ればよくわかる）。
- けれども，まもなく，アンブロジウス大司教は殉教などをまったく恐れる必要がないことが明らかとなった。
- 皇帝と教会との間に）多くの争いがあったなかで，そのような争い（皇帝と教会との権力闘争）は，教会（ローマン・カトリック教会）の独立的な権力を確立した。
- 成功する（成功にいたる）革命（大変革/大改革）は，全て権威（や権力）を揺るがし，社会の団結を（革命以前よりも）より困難なものにする。
- このような難点は，その起源を革命に負っているあらゆる権威（や権力）に内在している。
- 権力という観点から見ると，宗教改革には，我々に関係している二つの面がある（二つの面が我々に関係ある）。
- イングランドでは，ヘンリー八世は，彼らしい精力と冷酷さで（もって）この問題（注：教会の国家への服従）に自ら取り組んだ。
- このようなヘンリー八世の仕事は（も），エリザべス女王の治世下において，プロテスタンティズムと結んだナショナリズム（の一形態）が必要なものであるとともに有利なものになったということ（事実）がなければ，永続的なものとはならなかったかも知れない。
- けれども，エラストウス主義は，（教会と直接関わりのない）個人的な信仰心（personal religion）の強い人々にとっては満足を与えるものでは決してなかった。
- 西欧世界は，宗教改革から1848年（注：ウィーン体制の崩壊）に至るまで，人権革命とも言って良い絶えざる大変動を経験していた。
- この天賦人権説が，その起源及びその（背景にある）感情からいっても，反政府的なものであることは明らかである。
- 個人主義は，論理的にも歴史的にもプロテスタンティズム（清教徒主義）と関係をもっていることは明らかであり，プロテスタンティズム（清教徒主義）は，権力を握るとしばしば自らの諸教義（説）を放棄したが，神学的領域においてはそれらの諸教義を主張した。
- 革命的信条と伝統的信条とが支配をめぐって闘う時，フランス市民革命の時に起こったように，勝利者の敗者に対する権力はむきだしの権力となる。
- 革命的な権力（革命をめざす権力）は，ナポレオンの事例が示しているように，むきだしの権力にしばしば堕落して行きがちである。
- 世界史上におけるロシア革命の重要性について判断を行うことは，まだ時期尚早である（注：『権力論』を出版した1938年の時点）。
- 共産主義(者)の理論の国際的な部分は，効果のないことが判明した。
- 自由主義の衰退には，技術的及び心理的な多くの原因がある。