バートランド・ラッセル『権力』（松下彰良・訳）
* 原著：Power; a new social analysis, 1938, by Bertrand Russell (London; George Allen & Unwin, 1938)総目次
第８章 経済的権力 イントロ累積版
- 経済力（経済的権力）は，軍事力（軍事的権力）の場合と違って，主要なもの（第一義的なもの）ではなく，派生的なもの（権力）である。
- しかし，同様の分析は，もっと不明瞭な事例（場合）にもあてはまる。
- 信用(力)(credit)は，他の（いろいろな）経済力よりも抽象的なものであるが，本質的に（他の経済力と）異なっているものではない。
- 経済力（経済的権力）と政治との結びつきは，ある程度まで，相互的なものである。
- もちろん，（実際の）歴史の発展はこれとは異なっていた(注：国際的な無政府状態は終焉しなかった)。
- 個人の場合において(も)，国家によって作られた諸規則が国法（the Law 定冠詞付きの大文字）の該当部分を構成している。
- 一国家内における経済力（経済的権力）は，究極的には，法と世論（の支持）に由来するが，それは容易に一定の自立性を獲得する。
- （ここで）しばらくの間,民主主義国における金権政治の権力について考えてみよう。
- 労働組合の権力は，金持ちの権力のちょうど逆である。
- 経済力（経済的な権力）は，法によって規制（統制）されるものであるかぎり，最終的には，土地の所有権に依存するものであるが，現代社会においては経済的権力の最大の分前(取り分)を所有しているのは，名目上の土地所有者ではない。
- 現代の大企業においては，所有権と権力とは決して必然的に結びついてはいない。
- このような権力の集中がどのようにして起こったかを理解することは容易である。
- 経済力（経済的権力）の保有は，軍事力あるいは（政治的）宣伝力の保有へと導く（至る）かもしれない（可能性はある）。
- 国家が自らの経済力（の強さ）のおかげで軍事力を(も)獲得した（国家の）例はたくさんある。
- けれども，商業は（今日では）その重要性を失ってしまっている。
- 経済力と軍事力とは，今日そうであるほど，過去においては，相互に密接に結びついていたことは決してなかった
- 国力において宣伝の演ずる役割は，教育の普及とともに増加してきている。
- この点に関して，我々は，マルクス主義が我々によく知らしめたある見解を考察しなければならない。
- 第二に生じる疑問は，資本家たちが，実際に，（労働者に対する）支配権を最高度に利用するだろうか（労働者を極限まで搾取するだろうか），という疑問である。
- 最後に(第三に)大部分の国民（people）は，危機に際して，自分の属する階級よりも自分の属する国家により忠誠を感ずる（ものである）。
- 今起きているスペイン内戦及びそれが他国に及している影響は，階級闘争が国家主義(者)の考慮事項（動機）を上回っている（に対し優勢である）ことを証明していると言えるかも知れない。
- 本章で述べたことを要約しよう。
- 単一国家内の経済関係において，法律は，他者（他人）から富を引き出す方法において何が可能か（許されるか）ということに対して，制限(限界 ）をもうける（置く）。