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バートランド・ラッセル 権力 第7章 (松下 訳)- Power, 1938, by Bertrand Russell

Back(前ページ) Next(次ページ) 第7章_イントロ索引 Contents(総目次)

第7章 革命的な権力 n.16 - 天賦人権説の反政府的要素

(三) フランス市民革命とナショナリズム(続き)

 この天賦人権説が,その起源及びその(背景にある)感情からいっても,反政府的なものであることは明らかである。専制政治の被統治者(subject 臣民,臣下)は,自分が好むように自分の宗教を選ぶ自由を持っているべきであり,何ら官僚的な干渉を受けずに,全て合法的に自分の商売をやる自由を持っているべきであり,好きなところ(場所)で結婚する自由を持っているべきであり,外国(人)の支配に対して抵抗する自由を持っているべきである,という考えを抱いている。政府の決議が必要な場合には,それらの決議は多数による決定かあるいは(国民の/多数者の)代表者たちによる決定であるべきであり,君主や僧侶のような恣意的かつ単なる伝統的な権威(権力)の決定であってはならない,と人権の擁護者は主張する。このような考えかたは,次第に文明世界全体に広まり,自由主義という独得な精神態度を生みだした。(そうして)この自由主義は,自由主義が権力を持っている場合にも(自由主義体制下においても),政府の行動について一定の疑いを保持している(のである)。

Chapter VII: Revolutionary Power, n.15

III. The French Revolution and Nationalism. (continued)

It is obvious that the doctrine is, in origin and sentiment, anti-governmental. The subject of a despotic government holds that he should be free to choose his religion as he pleases, to exercise his business in all lawful ways without bureaucratic interference, to marry where he loves, and to rebel against an alien domination. Where governmental decisions are necessary, they should - so the advocate of the Rights of Man contends - be the decisions of a majority or of their representatives, not of an arbitrary and merely traditional authority such as that of kings and priests. These views gradually prevailed throughout the civilized world, and produced the peculiar mentality of Liberalism, which retains even when in power a certain suspicion of governmental action.
(掲載日:2017.08.23/更新日: )