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バートランド・ラッセル 私の哲学の発展(松下彰良 訳)

My Philosophical Development, by Bertrand Russelll (London; George Allen & Unwin, 1959)


総目次

第15章 「真理」の定義 イントロ索引

  1. この一元論による真理の定義に関して私は次のように述べた。)  さて(now)、この見解(一元論による真理の定義)は一つの大きな長所を持っている。即ち、この見解は、誤謬なるもの(エラー:間違い)を全て及び唯一、一元論的真理説(理論)を拒否することにのみに帰着させる(という長所がある)。・・・。

  2. 真理についての一元論的理論は今では幅広い擁護者(支持者)をもたなくなっているが、私がそれと同時期に批評したブラグマティスト(実用主義者・実際主義)の理論(の方)は、依然として活発な支持者をもっている。・・・。

  3. (ひとつの)信念はその効果が優れていること(卓越性)によって真となるという見解に対するもっと一般的な反論のほかに、私には全く克服が困難だと考えたものがある。・・・。

  4.  (ひとつの)信念はその効果が優れていること(卓越性)によって真となるという見解に対するもっと一般的な反論のほかに、私には全く克服が困難だと考えたものがある。・・・。

  5. そういったプラグマティスト(実用主義者)による「真理」についての全く純理論的な批評とは別に、恐らく実用主義的(実際主義的)な気質の人々により訴えるように意図された、もっと実用主義的な批評がある。・・・。

  6. プラグマティズム(実際主義/実用主義)に対する理論的反対とは別に、今から五十年前、世界大戦(第一次及び第二次)が起る以前に- その後の歴史によって確証されていることであるが- 哲学としてのプラグマティズムは理論的に誤っているだけでなく、社会的にも破壊的なもの(disastrous)であると,私は考えた。・・・。

  7. ウィリヤム・ジェイムズは著書『真理の意味』(1909年刊)の中に発表された論文「二人の英国の批評家」の中で私の批評に応えた。・・・。

  8. 私は、ジェイムズの学説(doctrine)から帰結する(follow from)と現在でもなお私には思われること、即ち、 「"Aが存在する"という陳述は、たとえAが存在しなくとも、プラグマティズム(実用主義/実際主義)的な意味において、真でありうる(真になる可能性がある)と(当時)指摘していた(had pointed out)。・・・。

  9. 私は1939年にプラグマティズムに関する(2つの批評の)もうひとつの批評を書いたが、それはシルプ博士編集の「現代哲学者シリーズ」のデューイの巻に収録された。・・・。

  10. 私はこの理論を『意味と真理の研究』のなかに詳しく述べた(set forth)。・・・。

  11. 信念(Belief)とは - 私の理解するところでは - その信念を真あるいは偽とならしめる事実(または諸事実)に対して直接的な関係を含んでいない、一つの有機体の一つの状態(訳注:たとえば、ある時刻における人間の脳内の状態)である(状態を指す術語/用語である)・・・。

  12.  私としては、今述べたように、最も単純で最も直接的でかつ最も動物に近いところ(removed from 離れていないところ)から始めてみることにする(try to 試みることにする)。・・・。

  13. 感覚の関係的性格を放棄したことにより、私は「熟知」(acquaintance)の代りに「気づき」(noticing)を置くにいたった。・・・。

  14. さて、ここで、もし仮に言葉で表現するとしたら、「全て(all)」や「ある(some)」や「一つの(a)」 や「その (the) 」という語を含むような信念について考えよう。・・・。

  15. ひとつの陳述の立証者であるところの、ひとつあるいは複数の諸事実が、その陳述の論理的形式に密接な関係をもつ(bearing)論理的形式を具えている必要はないということを理解することは重要である。・・・。

  16. 要約しよう。・・・。

  17.  「真理」の定義は、それだけで、「知識」の定義を与えるわけではない(does not afford 力を与えない)。・・・。

    第16章