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バートランド・ラッセル『宗教と科学』(松下彰良・対訳)

* 原著:>Religion and Science, by Bertrand Russell (London; George Allen & Unwin, 1935)

総目次

第5章 魂と肉体 イントロ累積版

  1. 科学的知識の重要な部門の中で,最も発達の遅れている部門は心理学である。

  2. プラトンの著作から(を読んで判断すると),キリスト教によって後に説かれたのとかなり似通った説が,プラトンが生きた時代には、哲学者たちの間よりも一般民衆の間に広く抱かれていたように思われる

  3. 古代世界においてはプラトン的(なもの)だったキリスト教哲学者たちの説も,11世紀以後は,主としてアリストテレス的(なもの)になった。

  4. 魂と肉体は,スコラ哲学> -それはいまだ力トリック教会の哲学であるが- においてはともに「実体(substances)」である。

  5. このようにして,啓示によらなければ,我々は,ある時見られた事物や人物(人格)が別の時に見られた似通ったものと同一であるか否か,決して確信することはできないと思われた。

  6. まず肉体を取り上げよう。

  7. 自分(私)は昨日の自分(私)と同じ人物であるという「ある種の」意識が明らかに存在する。

  8. ヒユーム(の問い)に答えようと企図したカントは,その難解さ(不明瞭さ)ゆえに深遠と思われた一つの方法を見つけ出した,と考えた

  9. 哲学がこのような中途半端な場所(a half-way house)に留まっていることは不可能だった。

  10.  魂(精神)と肉体の関係を考えることにおいて,現代哲学との調和が困難なのは実体の概念だけではなかった。

  11. 最初の困難は力学の諸法則の発見によって生じた。1

  12. この説(心身並行説)は信じ難い上に,自由意志を救いえないという欠点がある。

  13. 心理学と(人間の)意志に関する理論に戻ろう。

  14. 心理学及び物理学は,より科学的になるにつれ,両者の伝統的概念はますます精度の高い新しい概念に道を譲るようになる(とって代わられることになる)。

  15. その対象(物)が主な原因であるような何かが我々(の身体/感覚器官)に起こり、そうして,その対象に対して我々が推論することを許すような性質を持っているような何かが我々(の身体/感覚器官)に対して起こる時,おおざっぱな意味で(in a loose sense),我々はその対象を「知覚」すると言うことが出来る。

  16. 「意識」の問題は,ことによると,もっと難しい問題かも知れない。

  17. 「意識」という概念のより重要な役割(part)は,我々が内省によって発見することと関係(関連)がある。

  18. 最後に述べておくべきことは,魂と肉体との旧来の区別は,「心」がその霊性(霊的性格)を失ったと同様に「物質」もその旧来の堅固さまったく失っってしまったために,消失してしまったということである。

  19. (さて)生理学や心理学に関する現代の学説が,不死に対する正統信仰にどのような関係を持つか(持っている)か問うこと(仕事)が残っている。

  20. 地獄(の存在)に対する信仰が衰えたのは,何か新しい神学的論拠(神学的議論)によるのではなく,(また)科学の直接的影響でさえなく(nor yet でさえなく,ですらなく),18世紀と19世紀の間に,残忍さが一般的に減少したせいである。

  21. 科学が(人間の魂の)不死の問題について何を主張すべきかは必ずしも明確ではない。

  22. 科学にとって困難な事態が,魂や自我のような実体は存在しないと思われること(事実)から,生じる。

  23. この問題(注:生きている肉体に結びついた出来事と肉体が死んだ後に起る他の出来事との間に密接な関係が存在するかどうかという問題)に答えることを試みる前に,一定の諸事象を一人の人物の精神生活とするように一緒に結びつける関係は何かということをまず決定しなければならない。

  24. 「人物(人格)」を定義するこれらの二つの方法は,二重人格と呼ばれるものの場合において衝突する(conflict 衝突する,矛盾する)。

  25. もし,我々が肉体の死後に(自分という)人格が生き残ることを信じようとするなら,我々は記憶の継続性(注:死後も生前と同じ記憶を保有していること)あるいは少なくとも習慣の継続性を想定しなければならない。

  26. 人格は,本質的に,組織化の問題である。
第6章