バートランド・ラッセル『結婚論』(松下彰良・訳)
* 原著:Marriage and Morals, by Bertrand Russell (London; Allen & Unwin, 1929)- 性に関わる主題を扱う著者は,そういう主題に言及すべきではないと考えている人びとから,その問題に不当にとりつかれていると非難される危険が常にある。
- それゆえ,清教徒は,人間性の純粋に肉体的な部分を抑制することに成功しなかった(うまく抑制できなかった)ように思われる。
- こういった事実が示唆していることは,もしも性を強迫観念(的なもの)にしたくないのなら,道徳家(モラリスト)は,性というものを,食物が今日見られるようになっているように見るべきであり,テーバイドの隠者たちが,食物を見たような見方をするべきではないということである。
- けれども,できるかぎり声を大にして,繰り返し述べたいのは,私はこの(性の)話題に不当に専心(専念)するのは害悪だと見なしていること,また,この害悪は,現在,特にアメリカで広まっているように思われるということである。
- 私は,食物についてと同様,性についても道徳や自制はまったくなくてよい,と言っている(示唆しようとしている)のではない。
- 包括的な性倫理は,性をただ単に自然な飢えであり,危険の潜在的源泉とみなすだけで済ますわけにいかない。
- 過去の芸術は,民衆(大衆)に基礎(a popular basis)をおいていた(持っていた)。
- 芸術家が必要とする性的な自由は,愛する(恋愛する)自由であり,見知らぬ女と(で)肉体的要求を満たすような粗野な自由ではない。
- 私は,人生で最上のものはすべて性と関わりがあると言うつもりはないし,また,決してそう信じてはいない。
- 権力は,また,この語を最も広い意味で理解すれば(注:「(様々な)力への欲求」というような広い意味にとれば),大部分の政治的活動の動機となる。
- これまで言ってきたことが正しいなら,芸術家以外の最も偉大な人びとの大部分は,性と関連のない動機によって重要な活動をしてきた(のである)。