第8章 経済的権力 n.21 - 国益と対外政策
今起きているスペイン内戦及びそれが他国に及している影響は,階級闘争が国家主義(者)の考慮事項(動機)を上回っている(に対し優勢である)ことを証明していると言えるかも知れない(注:Guerra Civil Espanola 1936年7月-1939年3月の間,スペインで勃発した軍事クーデターによる内戦のこと。左派の人民戦線政府とフランコ将軍率いる反乱軍(ナショナリスト派)とが争った。人民戦線をソビエト連邦が支援し、オーウェルなどの欧米市民知識人も数多く義勇軍として参戦し、これに対しファシズム陣営のドイツ・イタリアがフランコを支持し参戦。ピカソが1937年に描いた「ゲルニカ」はフランコ軍とドイツ軍による史上初めての市民無差別爆撃を題材にしたもの。なお、ラッセル『権力論』が出されて1年後にはスペイン内戦は終結している)。けれども,私は,(内戦の)趨勢(course of events)がこの見方を裏付けているとは思わない。ドイツとイタリアはフランコに味方する国家主義的な理由を持っていた。(これに対し)英国とフランスはフランコに反対する国家主義的な理由を持っていた。確かに,英国のフランコに対する対立(敵対)は,これまでのところ,英国政府の活動を決定するものが英国の(国家としての)利害(国益)だけだった場合よりも,ずっと少なかった(ずっと少ない状態が続いてきた)。なぜなら,保守派(英国保守党員)は,当然,フランコに共感するからである。にもかかわらず,モロッコの鉱石とか地中海の(英国の)制海権(control 支配権)といったようなことが問題になるやいなや,英国の利害(国益)が政治上の(スペインに対する)共感に優先する。強国の集団編成(グルーピング)は,ロシア革命が起こったにもかかわらず,再び,1914年以前そうであった状態になっている。自由主義者(英国自由党員)はツァー(ロシア皇帝)を憎んだ。そうして,保守主義者(英国保守党員)はスターリンを(現在)嫌っている。しかし,エドワード・グレイ卿(注:Edward Grey, 1862年-1933年,英国自由党所属。第一次世界大戦開戦時の英国外務大臣)も現在の英国政府も,そのような趣味の問題が英国の利益(国益)の追求を阻害することを認めることはできなかった(のである)。
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Chapter VIII: Economic Power, n.21
It may be said that the present civil war in Spain, and its repercussion in other countries, prove that the class-war is now dominant over nationalist considerations. I do not think, however, that the course of events bears out this view. Germany and Italy have nationalistic grounds for siding with Franco; England and France have nationalistic grounds for opposing him. It is true that British opposition to Franco has been much less, hitherto, than it would have been if British interests alone had determined the action of our Government, because Conservatives naturally sympathize with him. Nevertheless, as soon as such matters as Moroccan ore or naval control of the Mediterranean are in question, British interests override political sympathies. The grouping of the Great Powers is again what it was before 1914, in spite of the Russian Revolution. Liberals disliked the Tsar, and Conservatives dislike Stalin ; but neither Sir A. Grey nor the present Government could permit such matters of taste to interfere with the pursuit of British interests.
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