年がたつにつれて私は,未婚の娘のアリスをますます熱愛するようになっていった。彼女は兄のローガンよりも浮ついたところは少なかったし(松下注:日高氏は,'弟'と訳しておられる。アリスはラッセルより5歳年上であり,ローガンは7歳年上と直前に書かれていることから,ローガンはアリスの'兄'であることは明らか),姉のコステロ夫人ほど無責任ではなかった。彼女は,(大人しかいない,堅苦しい)ペンブローク・ロッジでの生活にもかかわらず私が大事にはぐぐみ育てた,'純真な親切心'をすべてもっているように思われ,また,堅苦しいところも,偏見もなかった。彼女は私より5歳年上であったので,私が成人するまで未婚のままでいるかどうか,私は思案した。それはありそうもないように思われたが,私は,もし彼女が未婚のままでいてくれたなら,彼女にプロポーズしようと,ますます強く思うようになっていった。私は,かつてヴォーン・ウィリアムズ判事(Vaughan Williams, ?-?/作曲家の Ralph Vaughan Williams, 1872-1958 は別人) -彼の奥さんは,エリザベス朝時代の襞襟(ひだえり/右欄横の写真参照)を着けていた。むしろ着けていない方が意外なことであったが(?)- を訪ねるために,(Surrey 州の)リース・ヒル(Leith Hill)ヘ向かって,彼女と彼女の兄と一緒に,ドライブした時のことを記憶している。ドライブの途中で,彼らは,私がアリスに一目惚れした事実を引き出し,私があまりに感傷的になっているのを,ひやかした。どうして私が彼女に一目惚れしたか,その理由を話す時機がまだ来ていなかったので,私は心が深く傷ついた。彼女は私の祖母がレディと呼ぶような女性ではないことは私にはわかっていたが,彼女はジェーン・オースティン(Jane Austen, 1775-1817)のエリザベス・ベネット(オースティンの小説『自負(高慢)と偏見』のヒロイン)に似ていると思った。こうした態度において,私は,ある種の心地よい心の寛大さというものを意識していた思う。
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With each year that passed I became more devoted to Alys, the unmarried daughter. She was less flippant than her brother Logan, and less irresponsible than her sister, Mrs Costelloe. She seemed to me to possess all the simple kindness which I still cherished in spite of Pembroke Lodge, but to be devoid of priggery and prejudice. I wondered whether she would remain unmarried until I grew up, for she was five years older than I was. It seemed unlikely but, I became increasingly determined that, if she did, I would ask her to marry me.
Once, I remember, I drove with her and her brother to Leith Hill to visit Judge Vaughan Williams, whose wife wore an Elizabethan ruff and was otherwise surprising. On the way they elicited from me that I believed in love at first sight, and chaffed me for being so sentimental. I felt deeply wounded, as the time had not yet come to say why I believed in it. I was aware that she was not what my grandmother would call a lady, but I considered that she resembled Jane Austen's Elizabeth Bennett. I think I was conscious of a certain pleasurable broadmindedness in this attitude.
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