ラッセル英単語・熟語1500 |
モーセの十戒のうち9つは否定的な戒めである。もしあなたが、殺人、窃盗、姦淫、偽証、冒涜、両親や教会や国王に対する不敬を生涯にわたって慎めば、たとえ親切な、寛大な、あるいは有益な、行いを一度もしたことがなくても、道徳的賞賛に値するというのが、伝統的な考え方である。この非常に不十分な美徳の概念は、タブー道徳の結果であり、(これまで)計り知れない害をもたらしてきている。
Nine of the Ten Commandments are negative. If throughout your life you abstain from murder, theft, fornication, perjury, blasphemy, and disrespect towards your parents, your Church, and your King, you are conventionally held to deserve moral admiration even if you have never done a single kind or generous or useful action. This very inadequate notion of virtue is an outcome of tabu morality, and has done untold harm.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 1
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0205.htm
<寸言>
伝統的な倫理観は「禁止的な要素」が多かったが、現代的な倫理観はもっと「積極的な要素」が必要とされており、その点では大きな違いがある、と言っています。たとえば、キリスト教の信者においては、十戒がその倫理観を代表していましたが、十戒は、現代においては非常に不十分なものになっています。
ということで、ラッセルは「自由人の十戒」として以下のものを掲げています。
https://russell-j.com/DECALOG.HTM
自由人の見解のエッセンスは,多分新しい十戒として要約できるであろう。それは,従来の十戒にとってかわるものではなく,それを補足するものである。一教師として私(ラッセル)が広めたいと思う十戒は,以下のごとく述べることができるだろう。
1.何事も絶対確実だと思うな。
2.何事も証拠を隠してまでして押し進めるだけの価値があると考えてはいけない。というのは(なぜなら)、そういった証拠は,必ず明るみにでてくるものだからである。
3.成功を確信しても,考え続けることを決してやめてはいけない。
4.反対にあった時,それが自分の夫や子供であっても,権威で勝とうとせずに,議論で相手をうち負かすように努力すべきである。というのは(なぜなら),権威に依存する勝利は,現実的な勝利ではなく,幻影にすぎないからである。
5.他人の権威に尊敬を抱いてはならない。というのは(なぜなら),その権威とは相容れない権威が発見されるのが常だからである。
6.あなたが有害だと思う意見を力で抑圧してはならない。というのは(なぜなら),そうすれば(将来)こんどはそれらの意見が貴方を抑圧するようになるだろうからである。
7.意見が世間から並外れていることを恐れてはならない。というのは(なぜなら),現在受け入れられている全ての意見はかつては並外れていたものだからである。
8.不本意ながら賛成するよりも,分別をもって異論を唱えることに喜びを見つけなさい。というのは(なぜなら),もしあなたがあるがままに知性に価値を認めるならば,前者よりも後者の方がより深い同意を意味するからである。
9.たとえ真実が不都合なものであったとしても,どこまでも良心的に真実であるべきである。というのは(なぜなら),もしあなたが本当のことをかくそうとすると,もっと都合が悪いことになるからである。
10.愚か者の楽園に暮らす人たちの幸せを羨ましがってはいけない。というのは(なぜなら),それを幸せだと考えるのは愚か者だけだからである。
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