ラッセル英単語・熟語1500 |
宗教的寛容を最初に主張した人々は邪悪だと思われた。福音書には、キリストがより厳格な形式の安息日のタブーにどのように反対したか、記されている。このような例から考えると、私達が非常に称賛に値すると考える行為の中には、自分達の共同体の道徳規範を批判したり侵害したりすることで成り立っているものがあることを否定することはできない。もちろん、これは過去の時代や外国人に対してのみ適用されることであり、私達の道徳規範は完璧であるため、私達自身の間ではこのようなことは起こりえない(注:もちろん、これは皮肉ですよ!)。
Those who first advocated religious toleration were thought wicked, and so were the early opponents of slavery. The Gospels tell how Christ opposed the stricter forms of the Sabbath tabu. It cannot, in view of such instances, be denied that some actions which we all think highly laudable consist in criticizing or infringing the moral code of one’s own community. Of course this only applies to past ages or to foreigners; nothing of the sort could occur among ourselves, since our moral code is perfect.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 1
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0204.htm
<寸言>
最後の一文はもちろん「皮肉」です。早とちりの人がいて、時々、ラッセルが書いているこのような文章を「字句通りに」読んでしまう人がいます。早わかりの人が誤解してしまう表現がラッセルの文章にはいっぱいあります。英国人の文章になれている人にはそんな人はいないでしょうが・・・。
歴史の進歩は、社会が「常識」だと思っていることを批判し戦い、社会の「常識」を変える(社会が変わる)ことによってもたらされます。ラッセルの生涯を見ると、英国やヨーロッパや世界の「常識」と戦い、社会の「常識」の変化に大きな影響力を発揮したことがわかります。たとえば、ラッセルは、早い時期から男女同権の運動を行ってきましたが(注:1907年、35歳の時、WIMBLEDON 選挙区より,婦人参政権,自由貿易論を主張し立候補)、当時は演説会の会場で石や生卵をなげられるような状態でした。
しかし、第二次世界大戦後は、先進国においては状況が一変しました。ラッセルが1950年にノーベル文学賞を受賞した理由の一つも、ラッセルが著書を通じて、長い間、人間の自由の拡大のために戦ってきたことがあげられています。
しかし、そのような大きな変革があっても、「当たり前の状況」になると、あたかも昔からそうであったかのように思い、先人の努力を知っている人は激減します。歴史に対する忘恩行為と言ってよいでしょうか?
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