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拝啓 バートランド・ラッセル様
・・・。
夜、眠れない時、何を考えておられますか?
専門的な(職業的)活動と関係のある特別な夢を見ますか? もしそうでしたら、特徴があると思われる例を一つ示していただけませんか?
夢が何か人生に役立つような考えをあなたに与えてくれたことがありましたか?
ラッセルからの返事(1958年10月16日付)
拝復
10月13日付のあなたのお手紙に対する私の返事は以下のとおりです。
私が眠れない時は、通常、自分がした愚かなことについて考えていて目覚めているというのがその理由にあります。私はそのような時は、独りで詩を暗唱して、そういった愚かな考えを追い払います。
私は、自分の専門の仕事に関係のある夢はいっさい見ません。
私は、自分の仕事上の困難を解決するのに役立つような夢は一度も見たことがありません。しかし、自分があまり気付いていなかった自己欺瞞を治してくれた夢を見たことは何度かあります。
敬具
1958年10月16日 バートランド・ラッセル
'1. What are your thoughts during the night when you don't sleep?
2. Have you particular dreams which have to do with professonal activities? If so, could you give an example of one which appears to yo characteristic?
3. Have dreams furnished you with ideas useful in life?'
Dear Sir,
In reply to your letter of October 13, my answer are as follows:
1. When I do not sleep, it is usually because I am kept awake by thinking of foolish things I have done. I try to banish such thoughts by reciting poetry to myself.
2. I never dream about anything concerned with my professional occupation.
3. I have never had a dream which helped me to solve any difficulty in my work, but I have had dreams which cured me of some unconscious piece of self-deception.
Source: Dear Bertrand Russell, 1969
More info.:https://russell-j.com/beginner/DBR5-14.HTM
<寸言>
ラッセルは80歳をすぎてから、急に小説が書きたくなり、1953年に Satan in the Suburbs and Other Stories を、翌年には、NIghtmares of Eminent Persons を出版しています。(詩も含めた The Collected Stories of Bertrand Russell という本も出ています。)
前者については、1954年に、『ラッセル短篇集』という書名で中央公論社から邦訳が出版されています(原著がでた翌年です!!)。後者は、各界の著名人が、それぞれの業界独特の悪夢に悩まされる姿を描いたもので、見る人によっては愉快であったり、見る人によっては「悪趣味」と映ったりするかも知れません。特に「教訓的?」なのは、順風満帆の人生を歩み、功成り名遂げた人が、昔犯したたった一度の悪事が露見しそうになり、自らを追い込んでいく姿を描いている短編は、どの時代の人にも受けそうそうです。由良君美氏(故人)は東大の教養部の語学テキストとして使用して、学生とともに楽しんでいます。次のページにその様子が紹介されています。
<(ラッセル著書解題10> 『有名人の悪夢』(由良君美・解題)
出典:『ラッセル協会会報』n.11(1968年10月)pp.4-5.
https://russell-j.com/KAIDAI10.HTM
名誉毀損で訴えられるといけませんが、「3Aの悪夢」と題して、政治家3人(安倍、麻生、甘利)が悪夢に苦しめられる姿を描いたフィクション(小説・演劇・映画・アニメ)を創作して発表すればヒットしそうです。井上ひさし(故人)か三谷幸喜にお願いしたいところです。
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell