ビスマルク(注:ドイツの鉄血宰相)は異常な機敏さによって,三度の戦争に勝利してドイツを統一した。(しかし)彼の政策の長期的結果は,ドイツが二度のとてつもなく大きな敗北(注:第一次世界大戦と第二次世界大戦での敗戦)を被った,ということであった。そのような結果が生じたのは,ビスマルクがドイツ人たちに,自国以外のすべての国々の利害(国益)に無関心であれと教え,侵略的精神を生み出し,そのことが世界中を結束させ,ビスマルクの後継者たちに敵対させるにいたったからである。
Bismarck with extreme astuteness won three wars and unified Germany. The long run result of his policy has been that Germany has suffered two colossal defeats. These resulted because he taught Germans to be indifferent to the interests of all countries except Germany, and generated an aggressive spirit which in the end united the world against his successors.
出典: Bertrand Russell: Ideas That Have Harmed Mankind,1946.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0861HARM-190.HTM
<寸言>
連続した「短期的成功」によって自分(たち)の政策が正しいと「過信」することによって,長期的にみれば,未曾有の悲劇や敗北をもたらすことがあることは歴史を見れば明らかである。短期的視野しかもっていない者は,トランプが得意とする deal (取引を繰り返し),成功(利益)が積み重なると気を良くして大胆になり,結局はそれまでの成功(利益)を帳消しにするどころか,大きな被害を受けるようなことをしてしまう。それが,自分だけが被害を受けるのであれば自業自得であろうが,政治家が自国の国民に災害をもたらすようであれば,政治家まかせにしておくことはできないはずである。