バートランド・ラッセル関係文献紹介 _ 2012年
索引(未作成)(-出版年順 著者名順 書名の五十音順)
「ラッセル関係文献紹介」は,ラッセル研究書や研究論文等(ただし,専門的すぎるものは原則として除く)についてご紹介するものです。「R落穂拾い」の方はラッセル関係文献とは言えないもの,たとえば書名や論文名等に「ラッセル」の文字がでてこない,気がつきにくい(落ちこぼれやすい)文献・情報を「落穂」のごとく拾って紹介するものですが,「ラッセル関係文献紹介」の方は,あきらかにラッセルに関係していると分かる文献や情報をご紹介するものです。
* B. C. バーント(Bruce C. Berndt
* R. A. ランキン(Robert A. Rankin, 1915-2001):元グラスゴー大学教授。
* 原著:Ramanujyan: Letters and Commentary. American Mathematical Society, c1995.(History of Mathematics, v.9)
[pp.57-60:ラッセルからオットーライン・モーレル婦人(→ オットリン・モレル夫人)
への手紙 1913.2.2]
日曜日・深夜
愛する君へ
・・・(中略)・・・。
・・・。ホールで合(→会)ったハーディ(G. H. Hardy, 1877-1947)とリトルウッド(J. E. Littlewood, 1885-1977)は大変興奮していました.というのも彼らは第2のニュートンを発見したというのです.その第2のニュートンというのは,マドラス在住のヒンドウー教徒で年収20ポンド程の事務員です.彼は手紙で独学で得たいくつかの結果をハーデイに伝えてきたのですが,ハーディは,それがすばらしい結果であり,しかも普通教育しか受けていない人間が発見したものとすればなおさらのことと考えています.ハーディは,ただちにこの男を当地に招聘したい旨を伝える手紙をインド局(Indian Office)に送ったそうです.目下のところこの件は内密なのですが,私もそれを聞いて大変興奮しています.
学期中に物質の問題を考えるための時間を確保するのは大変難しいことです.ロンドンから戻ると,私には,ロイスのこと,校正,前書きの執筆,講義,昼食,ワードとの散歩などが待ち構えています.さらにヴィトゲンシュタインや他の人たちがひょっこり訪ねてきたりするのです.その結果,金曜日の夕刻まではほんのちょっとした休憩をとることも難しく眠くなってしまうのです.そしてこんなことが土曜日まで続いてしまうのです.
・・・(中略)・・・。仕事のことを考えると,年月はおそろしいほど早く進んでしまいます.人というのは本当の仕事を成し遂げる前に死んでしまうものなのではないでしょうか.一方,感情のことを考えるとまったく違ってきます.それを考えると人生はおそろしく長いものにみえてしまいます.人はいくつもの結末を迎え,そして新しい始まりを迎えるものですが,仕事について言えば,人はいつも入り口に立っているようなものです.私の人生観について言えば,私自身,年々成長し広い心を持てるようになり,因習的な考えにとらわれなくなっていることがわかりました.これは心地よいことです.特に私自身広い心を持ち因習的思想の奴隷状態から開放(→解放)されるために,おおいに苦学していたのでなおさらのことです.
私は,大変幸せです.人生は充実し活力にみちています.親愛の人であるあなたからお手紙が届くのを心よりお待ちしています.私の愛のすべてはつねにあなたとともにあります.心をこめて.
あなたのB
<訳者による注釈>