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ラッセルにおける戦争と平和 - 国家悪について- 2006年08月15日

*(アドホック・エッセイ)目次

★2010年8月14日,HTML修正後再掲
 

戦争と平和に関するラッセルの名言・格言

 戦争と平和の問題について,ラッセルは膨大な量の発言をしていますが,'終戦記念日'を向かえ,主として,牧野力編著『ラッセル思想辞典』から,ラッセルの発言を拾ってみました。下の方にあげた「国家悪のリスト」と対照してみると興味深いと思われます。

 国家は,国民の安全を保つために,また国民の社会福祉のために,依然として必要ですが,国家が存在するために,「国家悪」とでも言うべきものが必然的に生まれ,国民を苦しめることがあります。戦争をしかけることが国家悪の最たるものです。日本では,秀吉が刀狩をし,明治政府は「廃藩置県」を行いましたが,現在の世界に必要なのは,ラッセルが言うように,(各国の警察力以外の,武力を独占した)「世界政府の実現」,即ち,廃「主権国家」置「世界政府のもとの自治体」であると思いますが,いったいいつのことになるでしょうか。

 以下,『ラッセル思想辞典』からの引用
  1. (1914年)8月3日の夕方,私は,ロンドンの街頭,特にトラファルガー広場の辺りを歩き回った。そして(宣戦布告に)歓呼しつつある群衆を発見し,感動している通りすがりの人々に対して,心が痛むのを覚えた。・・・。これにはいささか驚かされた。私は浅はかにも,ほとんどの平和主義者が主張していたように,それまでは,戦争は常に専横な,そして権謀術数に長けた政府によって,嫌がる民衆に押しつけられるものだと想像していたのである。(『ラッセル思想辞典』の該当項目へ)右イラスト Jolly- The downfall of our enemies 出典:B. Russell's The Good Citizen's Alphabet, 1953.)
  2. 恐怖,深層に潜むほとんど無意識な恐怖は,非常に多くの人々を支配する動機であり,相互不信の源泉である。戦争や破壊的衝突を,闘争本能から類推して,「人間性の要求」として肯定的に考えるのに私は反対する。それは誤った類推であり,無知な臆病にすぎないからである。(『ラッセル思想辞典』の該当項目へ)
  3. 「正義」という考えを心理的に分析すれば,それは望ましくない情熱に根ざした,理性的に認められそうもないものであると私には思える。・・・。正義の概念の心髄は,正義という仮面をかぶり,加虐症(サディズム)に吐け口を与えることにある(『ラッセル思想辞典』の該当項目へ)

  4. いかなる国家も国内で人を殺せば殺人罪で罰するのに,国外に対しては,殺人に反対するものを罰する(外国で多数の人間を殺害すれば英雄になれる)

  5. 西欧の少年少女にとって,最も重要な社会的忠誠は,彼らが市民として所属する国家への忠誠であり,国家への義務は政府の命令通りに行動することだ,と教えられる。この教えに疑問を抱かせないように,歴史・政治・経済で偽りを教え,外国の過失は必ず指摘し,自国は善良な防衛戦争に立ち上がったと吹き込まれる。自国が戦火をまじえ,外地を占領するのは,文明を広め,福音を伝えるためだ,と信じ込ませようと努めている。この政策に立脚する国家主義者が願う愛国心を注入するために,民衆のヒステリーや情動性を利用する。これは国家的利益を握る人々が行う,最も恐ろしい現代の悪の源泉であるこれは国際関係に精通する人々には,誰にも明白な事実である。(『ラッセル思想辞典』の該当項目へ)

  6. 西欧世界全体を通じて,自由の破壊を目的とする集団に,自由を与えるかどうかという緊急問題が起きて来た。・・・。危険なのは,驚いた人々が,自由を支持する一般的な議論を忘れ,そして,自由を確保する上で必要な限度を越えて圧制をやりだすことである。英国においてはこの危険を避けてきたと私は考えるが,この危険が米国において回避されてきたとは思われない。(『ラッセル思想辞典』の該当項目へ)

  7. 人類は昔の競争の習慣やその僅かな利益の夢が忘れられず,今日の泥沼におちた。二回の大戦もその実例であった。東西に対立感情があり,互いに背後にピストルを握っていれば,どちらが先に発砲するのかと疑うことしか考えられず,協力どころでなくなる。(『ラッセル思想辞典』の該当項目へ)

  8. 歴史(世界史)の教科書は,国際連盟の手で交戦国,対立者,中立者を含めて公正に編纂されるべきである。(『ラッセル思想辞典』の該当項目へ)

  9. どの国も例外なしに悪いことをやってきたし,その大部分は馬鹿げた過ちであったことを,子ども達におしえなければなりません。集団ヒステリーにより,どのように国民全体が愚劣な行動に駆られるか,また,広く行き渡った集団的狂気におし流されずに毅然たる態度をとる少数者をいかに迫害するか,子どもたちに教えるべきです。(『ラッセル思想辞典』の該当項目へ)

  10. 世界が安定するためには,(1)武装軍隊を独占した世界政府の樹立,(2)世界全地域の生活水準の向上と平均化,(3)人口抑制による少なくとも緩慢な漸増状態の維持,などが必要である。どの一つを欠いても不安定が生れる。(『ラッセル思想辞典』の該当項目へ)


 代表的な「国家悪」リスト(日本版)
  1. 戦争
    (防衛・自衛の名のもとに海外派兵/ただし,自国領土内に他国の軍隊が実際にせめてきた時の自衛は除く)
    ・自国と他国とで,倫理道徳を使いわけ
    (例:他国の人民に大きな被害を与えても,国のためにつくしたということで,叙勲したりさえもする。国を守るために戦った人は,区別・差別せずに祭るとか,戦死した人に報いるためにとか言って・・・/「無駄死」だからこそ,戦争はしてはいけないのに,戦死した人を「英霊」といった表現で美化したりすれば,・・・。
    ○戦時中のいやな言葉:非国民,思想犯,大東亜共栄圏,聖戦,八紘一宇,滅私奉公,一億火の玉,一億玉砕,人間魚雷,本土決戦,欲しがりません勝つまでは,天皇陛下万歳・・・)
    ○最近のいやな言葉:自虐史観,売国奴,(「生存」競争での勝ち組・負け組),・・・。


  2. 制度的・構造的問題
    1)国防関係者と軍需産業との癒着(政府,防衛庁/特に米国の産軍複合体制がひどい。時々大きな戦争を起こして弾薬や兵器等の在庫一層ができれば,軍需産業は安泰)
    2)談合体質(政府,国土交通省,経済産業省,その他各省庁/政治家も,賄賂とは言わずに,「政治資金」獲得のために利用する)
    3)国防秘密漏洩者に対する過度な処罰(政府,外務省,防衛庁/政府が国民を欺く行為をしても,そのことを暴くと,暴いた人は処罰される/「国防」をかざせば,国民の知る権利も無視できるかのように・・・。)
    4)司法取引(政府,法務省,警察庁/重大な犯罪を犯したものも,司法取引で刑を非常に軽くしてしまう。特に米国はひどい。犯罪者も法の下の平等はない。権力者に協力するものはいつも大目にみてもらえる。

  3. 政府・行政による各種規制行為
    1)通信,マスコミ規制(総務省/政治家,特に与党の政治家を批判すると,個人(政治家本人や関係者)のプライバシー保護を持ち出し,・・・)
    2)教科書検定(政府,文部科学省/特に,戦争と平和の問題)

  4. 政府・行政の不作為=犯罪的行為
    1)水俣病その他の各種公害(環境汚染)への対策の遅れ(政府,環境庁・環境省,厚生労働省)
    2)らい病患者救済対策の遅れ(政府,厚生労働省)
    3)薬害エイズ対策の遅れ(政府,厚生労働省)
    4)耐震偽装問題における行政側のチェック体制の不備(政府,国土交通省,総務省?)
    5)BSE問題で米国に譲歩(政府,農林水産省,厚生労働省)
    6)アスベスト被害対策の遅れ(政府,厚生労働省/産業界はコスト優先,国民の健康は二の次)
    7)その他の各種の不作為(すべての省庁にあり)

  5. その他いろいろ
    ・天皇の政治利用
    ・あとはご自分で追記してください!