バートランド・ラッセル「安定世界の三要件」
* 原著:Three essentials for a stable world, 1952, by Bertrand RussellIn: New York Times Magazine, 3 Aug. 1952, pp.11 & 53.; Repr. in: (58)Fact and Fiction.
* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』
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世界が安定するためには、(1)武装軍隊を独占した世界政府の樹立、(2)世界全地域の生活水準の向上と平均化、(3)人口抑制による少なくとも緩慢な漸増状態の維持、などが必要である。どの一つを欠いても不安定が生れる。・・・。ソ連が崩壊すれば、あるいは米国が衰退すれば、万事好都合と考える人々もいよう。一九一四年から数年、ドイツに対し同じことを考えていた人々がいた。また、第二次大戦で日、独、伊が敗退すれば、世界は安定すると同じように考えていた。だが、今現実はどうか。
There are three things that must be achieved before stability can be recovered: the first of these is a world government with a monopoly of armed force; the second is an approximate equality as regards standards of life in different parts of the world; third is a population either stationary or very slowly increasing. ... There are those who imagine that, if once we had defeated the Russians, all would be well. In 1914-1918, they thought this about the Germans. Ten years ago they thought it about the Germans and Japanese. ...
戦争で敵を破ることは、それが当時どれ程必要であったとしても、社会問題や国際問題の建設的で、望ましい解決には全くならないのである。戦争(武力)を解決手段とする発想自体を戦争勃発の遥か手前で根本的に転換すべきである。これが安定への第一歩である。
(松下寸言:「北朝鮮やイラクの問題さえ解決できれば、・・・、テロさえ撲滅できれば・・・、その他、**さえ何とかなれば・・・」、といった発想は甘いということですね。)