バートランド・ラッセル 英単語・熟語 dokushu05 - 修飾語を選ぶときには頻度に注目
< 今井むつみ『英語独習法』>
p.220: 母国語話者は、ある単語、あるいは単語の組み合わせについて、それがどのくらいの頻度で使われるのかということを感覚的に知っている。・・・
この直感が非母国語話者にはなかなか持てない。そのため、いきおい、very や much などをよく使ってしまう。
p.221: (たとえば)「厳しい競争を勝ち抜かなければならない」という文を英語にするとき、形容詞をどのように選んだらよいだろうか? google で「厳しい 英語」と検索し、Weblio の和英辞典を見てみると、tight, unsparing, exacting, stern, strict, rugged, tough, intense, acute, severe など、多くの単語が挙げられている。これ以外にも hard, difficult などが使えるかも知れない。・・・。
: ・・・しかしここでチェックしておきたいのは、(使用)頻度である。SkELL の Exsamples では、トップに頻度情報が出ている。・・・
"severe competition" の頻度は 0.03 hits per million、100万語につき 0.03件とある。 tough competion が0.29件、fierce competition が0.4件なので、"severe competition" は典型的な言い方ではないことがわかる。
ラッセルの用例
「ラッセルのホームページ(ポータルサイト)」にアップロードしてあるラッセルの著作について調べると、competion の形容詞は free (即ち、"free competition" 自由競争)が一番多いことがわかります。そこで、、"free competition" の使用例は5つだけあげておきます。
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あるいは アマゾンで購入 |
[19世紀自由主義のスローガン(合言葉)であった'自由競争'は,疑いもなく支持すべき多くの長所を持っていた。]
出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ集』の中の「成功と失敗(自由競争社会)」
It is hard on a man to be born stupid, and, in a world of free competition, this initial misfortune will be aggravated by the fact that he will achieve no success.
[生まれつき頭が悪いことはつらいことであり,また,自由競争社会では,この当初からの不運は,彼が成功することはないという事実によって,いっそう悪化させられる。]
出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ集』の中の「成功と失敗(自由競争社会)」
It is only contemporaries who can give scope for spontaneity in free competition and in equal co-operation.
[自由な競争や対等な協力において,自発性への視野(機会)を与えられるのは,同年輩の仲間(contemporaries 同世代の人々)のみである。]
出典:ラッセル『教育論』第二部_性格の教育_第10章_「他の子供たちの重要性」
ラッセル英単語・熟語1500 |
[自由主義的な見解は,実業(事業)と政治的宣伝においては自由競争がなければいけないが,軍事力においては自由競争があってはならないということであり,一方,イタリアのファシストやドイツのナチスは,それとは正反対の意見を主張しており,競争は国家総力戦(国民国家と国民国家との戦争)の形をとる場合以外は善くないものであり,国家総力戦の場合には競争は人間の活動の中で最も崇高な形をとると主張している。]
出典:ラッセル『権力』第14章「試験結婚」
Free competition, which was accepted whole-heartedly as the main incentive to progress by British and American Radicals, was, no doubt, recommended chiefly by economic considerations, but had also an obvious connection with Protestantism.
[自由競争は(人類の)進歩にとって主要な刺激物である,とイギリスおよびアメリカの急進論者たちは心から信じていた。これは疑いもなく,主として経済的な配慮にもとづいて奨励されたのであるが,同時にまた,プロテスタンティズムとも明白な関係がある。]
出典:ラッセル『自由と組織』まえがき
The injustice, the cruelty, and the misery that exist in the modern world are an inheritance from the past, and their ultimate source is economic, since life-and-death competition for the means of subsistence was in former days inevitable.
[現代世界に存在する不正(不公正),残酷,悲惨は過去の遺産であり,その最終的な根源は経済的なものである。なぜなら,昔は,(収入・食料不足時における)生存の手段のための生きるか死ぬかの競争は,避けられなかったからである。]
出典:ラッセル「宗教は文明に有益な貢献をしたか?」
There is therefore, both within each species and as between different species, a constant competition, in which the penalty of defeat is death.
[従って,各々の種の内部,及び,異なった種相互の間,の両方において,絶えざる闘争が行なわれ,敗北の罰は死である。]
出典:ラッセル『宗教と科学』第3章 進化
There is, however, another form of economic competition which is as fierce as it ever was, I mean the competition for jobs. .
[けれども,今も昔と変わらずに熾烈な,もう一つ別の形の経済的競争,即ち(私が言おうとしているのは)職を求めての競争(就職競争)が存在している。]
出典:ラッセル『権力』第14章「競争」
It is science above all that has determined the importance of raw materials in international competition.
This opposition is due partly to mere superstition and desire to conciliate the Catholic vote, partly to the desire for large armies and severe competition between wage-earners, so as to keep down wages.
出典:Bertrand Russell : Icarus, or the Future of Science