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ラッセル『権力』(松下彰良・訳)

Power, 1938, by Bertrand Russell

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第17章 権力の倫理学, n.6

 権力愛は,色欲と同様に,人々がそうだと思う以上に(想像する以上に),大部分の人々の行動に影響を与える強い動機(の一つ)である。従って,最善の結果を生みだすであろう倫理は,理性が正当化できる以上に,権力愛により反対するものであるだろうと主張されるかも知れない(注:みずず書房版の東宮訳では「It may therefore be argued that the etic ...」のところを「(従って)・・・権力愛を憎むものだということがわかるであろう。」と訳されており,その後に続く文章(そう思うかも知れないがそうじゃないですよ)という文脈を東宮氏はとらえ損なっている。従って「may be」は普通に「〜かも知れない」と訳すべきであろう)。(即ち)人は,権力追求の方向に(向かって),自分自身の行動規範(code)に背いて罪を犯すことはほぼ確実であるので,彼らの行為は,彼らの行動規範(自分を律する掟)が幾分厳しすぎるくらいで,丁度良いものとなるであろう(注:be about right ほぼ正しい)と(あなたは)言われるかも知れない。けれども,(何らかの)倫理的原理を提唱している人は,そのような考慮すべき事項に自分自身が影響されることをほとんど許さない。というのはもしもそんなことをすれば,彼は徳(美徳)のために,意識的に嘘をつくことを余儀なくされるからである。真実であることよりも,むしろ教化・善導的でありたいという欲求は,説教者や教育者を毒するもの(bane 破滅のもと)であり,理論的に,教化・善導的でありたいという欲求が有利なようにどのようなことが言われるかも知れないが,実践の上ではそのような欲求は紛れもなく有害(unmitigatedly harmful)である。我々は,人々(人間)は権力愛から(これまで)不正な行動をしてきたことを,また,今後もし続けてゆくであろうことを,認めなくてはならない。しかし,それを理由として,権力愛が恩恵的であるかあるいは少なくとも無害なものとなると信じられるような形態と状況のもとにおいても権力愛は望ましくないと主張すべきではない(注:権力愛はいかなる場合も望ましくないと言うべきにあらず)。

Chapter 17: The Ethics of Power, n.6

Love of power, like lust, is such a strong motive that it influences most men's actions more than they think it should. It may therefore be argued that the ethic which will produce the best consequences will be one more hostile to love of power than reason can justify : since men are pretty sure to sin against their own code in the direction of the pursuit of power, their acts, it may be said, will be about right if their code is somewhat too severe. A man who is propounding an ethical doctrine can, however, hardly allow himself to be influenced by such considerations, since, if he does, he is obliged to lie consciously in the interests of virtue. The desire to be edifying rather than truthful is the bane of preachers and educators; and whatever may be said in its favour theoretically, it is in practice unmitigatedly harmful. We must admit that men have acted badly from love of power, and will continue to do so; but we ought not, on this account, to maintain that love of power is undesirable in forms and circumstances in which we believe it to be beneficial or at least innocuous.
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(掲載日:2018.04.17 /更新日: )