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バートランド・ラッセル 権力 第12章 一党独裁から個人による独裁へ(松下 訳)

Power, 1938, by Bertrand Russell

Back(前ページ) Next(次ページ) 第12章__イントロ索引 Contents(総目次)

第12章 権力と統治形態 n.16


ラッセル著書解題
 けれどもその結果は,オールド・ボルシェヴィキ(注:Old Bolshevik:ボリシェヴィキ(=ロシア共産主義者)のうちで帝政ロシア時代,即ち1917年の十月革命以前から活動していた者を指す呼称)が望んでいたものとはまったく異なっていた。内乱,飢饉,農民(小作人)の不満といった重圧のもと,独裁制は次第により苛酷なものとなった。他方レーニン亡き後の共産党内における(権力)闘争は,次第に独裁制を(共産党)一党による統治からワンマン支配へと変容させた。こういったことは全て予見しがたいことではなかった。私は1920年に(『ロシア共産主義の理論と実際』の中に)次のように書いた。
ボルシェヴィキの理論は(によれば),あらゆる国々は,早晩,現在ロシアが経験していること経験するべきだ(通り抜けるべきだ)と要求している。そうして,そのような状態にあるあらゆる国々において,政治無慈悲な人々の手中に落ちるのを発見する(目撃する)と予想してよいであろう。そうした人々は,性来,自由に対する愛をまったく持っておらず,独裁制から自由へと移行することを急がせること対してほとんど重要性を見ない(理解しない)であろう。・・・。ロシアにおいてボリシェヴィキが置かれているように(その他の国々の)人々が置かれれば,権力の独占を放棄することをひどく嫌がるであろうし,それらの人々は,何らかの新しい革命によって放逐されるまで,その地位に居座り続けるための理由を見つけだすことは,殆んど避けがたいことではないだろうか?」
 以上のような理由から,神権政治(注: theocracy 神政政治/神聖政治。国家の政体の一種で、特定宗教を統括する組織と国家を統治する機構が実体的に同等な場合を言う。ラッセルは一党独裁で狂信的な共産主義イデオロギーを一種の宗教思想と見なしている。)民主主義への一つのステップ(段階)として見なすことは困難である。ただし、それ以外の点では(いくつか)長所があるかも知れない。

Chapter XII: Powers and Forms of Governmants, n.16

The result, however, was not quite what the Old Bolsheviks had hoped. Under the stress of civil war, famine, and peasant discontent, the dictatorship became gradually more severe, while the struggle within the Communist Party after the death of Lenin transformed it from government by a Party to one-man rule. All this was not difficult to foresee. I wrote in I920:
"The Bolshevik theory requires that every country, sooner or later, should go through what Russia is going through now. And in every country in such a condition we may expect to find the government falling into the hands of ruthless men, who have not by nature any love for freedom, and who will see little importance in hastening the transition from dictatorship to freedom.... Is it not almost inevitable that men placed as the Bolsheviks are placed in Russia ... will be loath to relinquish their monopoly of power, and will find reasons for remaining until some new revolution ousts them?"
For such reasons, it is difficult to regard a theocracy as a step towards democracy, though in other respects it may have merits.
(掲載日:2017.12.16/更新日: )