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バートランド・ラッセル 教育論 第17章
通学制の学校と全寮制の学校の長短

Bertrand Russell On Education, 1926

前ページ(Back)  次ページ(Forward) Chap. 17 Index Contents(目次)

第三部_知性の教育_第17 通学制の学校と寄宿制(全寮制)の学校(OE17-010)


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 少年や少女を寄宿制(全寮制)の学校に入れるほうがよいか、それとも、通学制の学校に通わせるほうがよいかは、私の考えでは、それぞれの場合において、(子供の置かれた)環境と(その子供の)気質に応じて決められるべき問題である。どちらの制度にも、それぞれ長所がある。ある場合には、一方の制度の長所のほうが大きく、ある場合には、他方の制度の長所のほうが大きい。本章では、私自身の子供について(どちらの学校が良いか)決める場合に、私にとって重要な意味を持つ議論を展開するつもりであり,その議論は、他の良心的な親にとっても重要な意味を持つだろう,と私は想っている。
 まず第一に、健康について考慮すべきことがある。現実の個々の学校がどうであるにせよ、この点に関しては、学校のほうが大部分の家庭よりもいっそう科学的に注意深くあることが可能であることは、明らかである。なぜなら、学校は、医者や歯医者や最新の知識を持った看護婦(保健婦)を雇うことができるのに対して、多忙な親たちは、医学の知識に比較的欠けていることが多いからである。その上、学校は、健康によい地域に建てることができる。大都市に住んでいる人びとの場合、これだけでも寄宿制(全寮制)の学校を支持する大変強力な議論である。若い人たちにとっては、生活の大部分を田舎で過ごすほうがよいことは、あきらかである。そのため、親たちが都会に住まなければならない場合は、就学のために,子供を遠隔地の学校へ送ることが望ましいかもしれない。この議論は、もしかすると遠からずあまり妥当性を持たなくなるかもしれない。(なぜなら)たとえば、ロンドンの衛生(状態)は、着実に改善されつつあり、紫外線の人工的な利用によって、田舎の水準まで引き上げられないとも限らないからである。(注:日光=紫外線を浴びることによって体内に生成されるビタミンDは骨の成長にかかせない。しかし,現代においては,紫外線を浴びることはできるだけさけたほうがよいことはほぼ常識になっている。当時は,紫外線の悪影響は世界的にほとんど知られていなかったと思われるが,現代においても,1日10分程度日光を浴びることはがん予防などのためによいとされている。)それにもかかわらず、田舎におけるように病気にかかることを少なくすることができたとしても、(都会においては)相当な神経的な緊張があり続けるだろう。絶え間のない騒音は、子供にとってもおとなにとってもよくない。田舎の景色、湿った大地の匂い、風や星々などは、あらゆる男女の記憶の中に貯えられなければならない。それゆえ,私は、都会の衛生状態が将来どれほど改善されたとしても、一年の大半を田舎で生活することは若い人たちにとって重要であり続けるだろう,と思う。
 これよりずっと墳末ではあるが,もう一つ、寄宿制(全寮制)の学校を支持する議論がある。それは、寄宿制(全寮制)の学校のほうが学校の行き帰りに時間をとられない、というものである。たいていの人の場合、自宅(家の)すぐ近くに本当によい通学制の学校があるわけではないので、通学距離はかなりのものとなるだろう。先の議論は、都会の住人に最も強くあてはまるものであったが、この議論は,田舎の場合に最も強くあてはまる。

Pt. 3: Intellectual education

Chap.17 Day schools and boarding schools (OE17-010)

Whether a boy or girl should be sent to a boarding school or a day school is, to my mind, a question which must be decided in each case according to circumstances and temperament. Each system has its own advantages ; in some cases the advantages of one system are greater, in others those of the other. I propose, in this chapter, to set forth the kind of arguments which would weigh with me in deciding about my own children, and which, I imagine, would be likely to weigh with other conscientious parents.
There are first of all considerations of health. Whatever may be true of actual schools, it is clear that schools are capable of being made more scientifically careful in this respect than most homes, because they can employ doctors and dentists and matrons with the latest knowledge, whereas busy parents are likely to be comparatively uninformed medically. Moreover, schools can be put in healthy neighbourhoods. In the case of people who live in big towns, this argument alone is very powerful in favour of boarding schools. It is obviously better for young people to spend most of their life in the country, so that if their parents have to live in towns it may be desirable to send the children away for their schooling. This argument may perhaps cease, before long, to have much validity : the health of London, for example, is steadily improving, and might be brought up to the standard of the country by the artificial use of ultra-violet light. Nevertheless even if illness could be brought as low as in the country, a considerable nervous strain would remain. Constant noise is bad both for children and adults ; the sights of the country, the smell of damp earth, the wind and the stars, ought to be stored in the memory of every man and woman. I think, therefore, that life in the country for the greater part of the year will remain important for the young whatever improvements may be effected in urban health.
Another argument, though a much smaller one, in favour of boarding schools is that they save the time otherwise spent in going and coming. Most people do not have a really good day school at their doors, and the distance to be traversed may be considerable. This argument is strongest in the country, as the other was strongest for town dwellers.

(掲載日:2015.07.24/更新日: )