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バートランド・ラッセル 自伝 第1巻第6章 - 感情の激変(松下彰良 訳)- The Autobiography of Bertrand Russell, v.1

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* 右写真出典:R. Monk's Bertrand Russell, the spirit of solititude, 1997.


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 その時の私の'独善'は,いまふり返って見ると嫌悪感を催させるが(ぞっとするが,彼女を批判したことについてはかなりの理由(根拠)があった。彼女は,人間として不可能なほど,一点の非のうちどころもないくらい高潔(有徳)であろうとしていたが,そのために,偽善に陥っていった。彼女は,彼女の兄のローガン同様,'意地が悪く',人をして'互いに悪く思わせて'喜んでいた。しかし彼女自身はこのこと(自分の悪意)に気づいておらず,そのやりかたは本能的に巧妙であった。彼女はいつも,他人に彼女の寛大さを賞賛させるようなやり方で人をほめていた。また,彼女が批判していた人たちが他からほめられると,彼女は,より以上に,彼ら(=ほめられた人)を悪く思った。彼女の悪意は,しばしば彼女を嘘つきにした。彼女は,私(ラッセル)は子供には我慢できないので(子供が嫌いなため),できるだけ子供たちを私に近寄らせないようにと,ホワイトヘッド夫人に言っていた。同時に彼女は,私には,ホワイトヘッド夫人は自分の子供たちの面倒をほとんど見ない'悪い母親'だと,言っていた。(松下注:ラッセルは子供が欲しかったが,アリスは不妊症であり,あきらめていた。また,ラッセルは,ホワイトヘッド夫人に好意をもっていた。アリスがそのような言動をホワイトヘッド夫人に対してしたのは,嫉妬心や子供のことにふれられたくない気持ちが働いたためであろうか?)私が自転車に乗っている間,それらのことが山のように思い出され,そうして,それまでずっと彼女を聖人だと思ってきたが,実際はそうではないと気づいた。私の感情の激変で極端な方向に進み,実際彼女がもっていた多くの美徳さえ,忘れ去ってしまった。
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Although my self-righteousness at that time seems to me in retrospect repulsive, there were substantial grounds for my criticisms. She tried to be more impeccably virtuous than is possible to human beings, and was thus led into insincerity. Like her brother Logan, she was malicious, and liked to make people think ill of each other, but she was not aware of this, and was instinctively subtle in her methods. She would praise people in such a way as to cause others to admire her generosity, and think worse of the people praised than if she had criticised them. Often malice made her untruthful. She told Mrs Whitehead that I couldn't bear children, and that the Whitehead children must be kept out of my way as much as possible. At the same time she told me that Mrs Whitehead was a bad mother because she saw so little of her children. During my bicycle ride a host of such things occurred to me, and I became aware that she was not the saint I had always supposed her to be. But in the revulsion I went too far, and forgot the great virtues that she did in fact possess.
(掲載日:2005.11.25/更新日:2011.4.26)