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バートランド・ラッセル 自伝 第1巻第4章
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* H. G. ウェルズの作品について
ウェッブ夫妻がひどく嫌っていた人たちがいた。彼らは,H. G. ウェルズ(Herbert George Wells, 1866-1946/話題の映画「宇宙戦争」の原作者)を憎んだが,それは,ウェルズがウェッブ夫人の厳格なヴィクトリア朝風の倫理にけちをつけたからであり,また,シドニー・ウェッブがフェビアン協会を支配しているのを,彼が排除しようとしたからであった。 ![]() ![]() 数年の間,ウェッブ夫人は,一部は健康上の,また一部は宗教上の動機から,断食に熱中していた。彼女はいつも朝食をとらず,また,非常に貧弱な夕食しかとらなかった。しっかりした食事は,昼食のみであった。彼女は,ほとんどいつも,多くの著名人をランチに招待していたが,彼女は空腹のため,食事の用意ができたと告げられるや否や,招待客の誰よりも先に席につき,食事をとり始めた。にもかかわらず,彼女は,飢餓(状態)は自分をより精神的にすると信じており,飢餓(状態)はきわめて素晴らしい想像力を与えてくれると,かつて,私に語ったことがある。その時私はこう応えた。「ええ。あなたは,ほとんど食事をしなければ'理想郷'を見る。しかし飲みすぎると蛇を見る。」 私の発言を,彼女は許しがたいほど軽率な発言と受け取ったようである。ウェッブ夫人の性格のなかの宗教的な側面は,シドニー・ウェッブにはなかった。しかしそれはいくらか彼には迷惑なことはあったにもかかわらず,彼はそれに対しまったく敵意を持っていなかった。 ウェッブ夫妻とフランスのノルマンディーのあるホテルに一緒に滞在していた時,夫人は,私たちが朝食事をしている痛々しい光景に耐えられなかったため,いつも朝は2階にいたままであった。けれども,シドニーはいつも,ロール・パンとコーヒーをとりに1階に下りてきた。宿泊した最初の朝,ウェッブ夫人は,「シドニーの朝食用のバターが,'私たちには',ありません。」といったメッセージを女中にもたせてよこした。彼女が「私たち」という言葉を使うのは,夫妻の友人たちにとって楽しみの1つであった。 |
Their political history was rather curious. At first they co-operated with the Conservatives because Mrs Webb was pleased with Arthur Balfour for being willing to give more public money to Church Schools. When the Conservatives fell in 1906, the Webbs made some slight and ineffectual efforts to collaborate with the Liberals. But at last it occurred to them that as socialists they might feel more at home in the Labour Party, of which in their later years they were loyal members. ![]() When they and I were staying at a hotel in Normnandy, she used to stay upstairs in the mornings since she could not bear the painful spectacle of us breakfasting. Sidney, however, would come down for rolls and coffee. The first morning Mrs Webb sent a message by the maid, 'We do not have butter for Sidney's breakfast'. Her use of 'we' was one of the delights of their friends. |
(掲載日:2005.07.07/更新日:2011.2.18)