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バートランド・ラッセル自伝 第1巻第2章 - アイルランド旅行(松下彰良・訳)- The Autobiography of Bertrand Russell, v.1

前ページ 次ページ 第1巻 第2章(青年期)累積版  総目次

・マイケル・ダビット著作集



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 二度,私はアガサおばさんとアイルランドに行った。私はいつも,アイルランドの愛国者マイケル・ダヴィット(Michael Davitt,1846-1906/右写真)と一緒によく散歩した。また,一人でもよく散歩した。アイルランドの景色の美しさに,私は深く印象づけられた。特に記憶しているのは,ウィクロウ州にあるルガラという小さな湖である。その時以来ずっと私は,これといった理由はないが,ルガラ湖というと,次の(詩の)一節を(いつも)連想する。
小石に覆われた岸に波がうち寄せる(向かう)が如く
我らに与えられた短い時間は,終わりに向かって急ぐ
(訳注:William Shakespeare Sonnet 60)
 5年後に,私が(アイルランドの)ダブリンにいる友人クロムプトン・デーヴィスを訪ねた時,私をルガラに連れていくように誘った。しかし彼は,思い出の'小石に覆われた湖岸'ではなく,その湖の上の高いところにある森へ私をつれていった。そうして私は,古い想い出を蘇らせようなどと考るべきではないと確信しつつ,そこを去った。
Twice I went with my Aunt Agatha to Ireland. I used to go for walks with Michael Davitt, the Irish patriot, and also by myself. The beauty of the scenery made a profound impression on me. I remember especially a small lake in County Wicklow, called Lugala. I have associated it ever since, though for no good reason, with the lines:
Like as the waves make toward the pebbled shore,
So do our minutes hasten to their end.
Fifty years later, when visiting my friend Crompton Davies in Dubltn, I induced him to take me to Lugaia. But he took me to a wood high above the lake, not to the 'pebbled shore' that I had remembered, and I went away convinced that one should not attempt to renew old memories.