仮に、週に一度、従業員(被雇用者)が雇用主(雇用者)の鼻をつまむことが許されるか、それ以外の方法で雇用主のことをどう思っているかを示すことが許されるならば、従業員の神経の緊張は緩和されるだろう。しかし、自分もまた心配ごとをかかえている雇用主にとっては、これでは事態は改善されない。従業員が解雇を恐れているように、雇用主は破産を恐れている。
If once a week employees were allowed to pull the employer's nose and otherwise indicate what they thought of him, the nervous tension for them would be relieved, but for the employer, who also has his troubles, this would not mend matters. What the fear of dismissal is to the employee, the fear of bankruptcy is to the employer.
Source: Bertrand Russell: The Conquest of Happiness, 1930, chap.5: Fatigue
More info.: https://russell-j.com/beginner/HA14-050.HTM
<寸言>
トランプの顧問弁護士を務めていたジュリアーニ元ニューヨーク市長が、210億円の賠償を命じられたために、破産申請をしたとの報道が昨年12月21日にありました。これは、2020年のアメリカの大統領選に絡む訴訟で、「ジュリアーニが、ジョージア州の選挙管理職員2人が票を改ざんしたと虚偽の主張をし、ジュリアーニが彼等のの名誉を傷つけた」と裁定されたためです。ジュリアーニによる「破産申請」は、上訴のための時間かせぎのようです。上訴してもまた敗訴すれば破産は確定してしまいます。しかし、トランプが大統領に再選されれば、大統領特赦(恩赦)でジュリアーニを無罪放免にすると予想されており、大統領の権力の強大さがよくわかります。
日本でも、第二次安倍政権の時に、安倍総理(当時)は、検察庁法で検事の定年は63歳になっているのに、(安倍氏の数々の不正献金疑惑等についての批判に対処するために)閣議決定により、東京高等検察庁の検事長である黒川氏(安倍政権の守護神)の定年を半年間延長してしまいました。長期政権により権力を保持し続けているからこそ可能なことでした。総理大臣は在任中に破産することは考えられませんし、権力を維持している限り無敵です。
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