バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 報復的な処罰は悪いことだと証明する方法を私は知らない。けれども、持ち出すことができる2種類の議論がある。ひとつは、前章で論じたように、罪の概念全体が間違っているという議論である。もうひとつは、賢明さ(分別)からの議論である。ヴェルサイユ(条約)及びその余波はナチスと第二次世界大戦を招いた。大部分の場合において、報復的な処罰は、処罰を与える者が期待するような効果をもたらさず、処罰を受ける者だけでなく処罰を与える者においても欲望の充足の総量を減少させる、ということを断言できると私は考える。
I do not know how to prove that vindictive punishment is a bad thing. There are, however, two kinds of argument which can be brought. One is that the whole conception of sin is mistaken, as I have argued in a previous chapter. The other is an argument from prudence. Versailles and its aftermath led to the Nazis and the Second World War. I think one may lay it down that in the great majority of cases vindictive punishment does not have the effects which are hoped for by those who inflict it, but diminishes the total of satisfaction of desire, not only in those who are punished, but also in those who punish.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 10:Is there ethical knowledge ?
More info.: https://russell-j.com/cool/47T-1012.htm

<寸言>
 犯罪は罰せられなければなりません。しかし、その懲罰(処罰)が行き過ぎたものであれば、逆効果となります。
 第一次世界大戦を引き起こしたドイツは処罰されなければなりませんでした。しかし、その処罰としてドイツに科された賠償金は当時としては天文学的な金額(注:円安なので現在のレートでは、300兆円以上)でとても支払い切れるものではありませんでした。支払い可能な金額であれば、自ら招いたものとして受け入れざるをえないでしょうが、ドイツ国民が生涯に渡って支払い続けても支払えない金額であれば、「いつか仕返しをしてやる」と思うのは人情です。そうして、第二次世界大戦を引き起こす大きな原因のひとつとなってしまいました。第二次世界大戦後、日本に過大な賠償金が科されなかったのはその反省からです。アメリカ人が特に人道的で情け深かったということではなさそうです。そのことはベトナム戦争でも証明されています。

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