バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 政府、法律、道徳など、様々な力を通して、共同体の利益が個人に押し付けられる。例えば、誰も盗んではならないというのは、共同体の利益になる。しかし、上記の諸力を別にすれば(自己利益だけを考えれば)、自分は盗むが他の人は盗まないということは、私にとって利益であろう。このような例外的な立場を維持できるのは独裁者だけであり、独裁者は権力を失えば支持を失うことになる。独裁者が存在するという事実にもかかわらず、迷信的なものでない限り、道徳規範の目的は、共同体の利益を個人に押しつけ、そうでなければ存在しないであろう個人の利益と(自分が属する)集団の利益との一致(identity 同一性)を生み出すことであると言ってよいだろうと思う。

Through these various forces - government, law, morals - the interest of the community is brought to bear upon the individual. It is to the interest of the community, for example, that no one should steal. But, apart from the above forces, it would be to my interest that I should steal, but no one else. Only tyrants can maintain themselves in this exceptional position, and tyrants are not approved when they no longer have power. I think we may say, in spite of the fact that tyrants occur, that the purpose of a moral code, in so far as it is not superstitious, is to bring the interest of the community to bear upon the individual, and to produce an identity between his interest and that of his herd which would not otherwise exist.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 10:Is there ethical knowledge ?
More info.: https://russell-j.com/cool/47T-1008.htm

<寸言>
 政府(統治組織)や法律や慣習という外部圧力がまったくなければ、安心・安全な社会はなりたちません。しかし、往々にして、組織が巨大になり、社会が複雑化すると、共同体が個人に押し付ける規範が個人の自由を圧迫しがちになります。
 個人の自由を重んじるラッセルとしては、個人対社会(国家その他の様々な組織体と個人)の問題は永遠の課題であり、注意しないと、いつの間にか、個人の自由が侵害される状況になる、と考えます。
 それは社会主義の国だけではなく、民主主義国にとっても大きな問題であり、権力者(総理大臣から小規模な組織の長まで)が不当な権力を行使しがちです。(国営放送ではなく、公共放送である)NHKの会長に権力(当時の安倍総理)に従順な者(籾井勝人氏)をあてたり、30歳たらずの息子を自分(岸田総理大臣)の公設秘書官にしたりしてしまいます。

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