バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 そして、何をなすべきかについての意見の相違を検証してみると、常にとは言えないかもしれないが、たいていの場合、行為の結果(効果)についての意見の相違から派生していることがわかる。未開人はタブーを犯すと死ぬと信じているかもしれないし、安息日厳守主義者は、日曜日に働くと戦争に負けると信じているかもしれない。このような考察は、道徳的規則は、絶対的であるように見えても、実際は、結果の推定に基づいていることを示唆する。そして、ある行為の道徳性をその結果によって判断するのであれば、前の段落の最後で示唆されたような「べき」の定義を採用せざるを得ないように思われる。それゆえ、私達の現在の理論は「べき」を定義不可能とする理論よりも確実に改善されている。

And when we examine disagreements as to what ought to be done, we find, usually, though perhaps not always, that they are derived from disagreements as to the effects of actions. A savage may believe that infringing a tabu causes death; some Sabbatarians believe that working on Sunday leads to defeat in war. Such considerations suggest that moral rules are really based on an estimate of consequences even when they seem to be absolute. And if we judge the morality of an act by its consequences, we seem driven to adopt some such definition of "ought" as that suggested at the end of the last paragraph. Our present theory is, therefore, a definite improvement upon the theory which makes "ought" indefinable.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter98:Is there ethical knowledge ?
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0905.htm

<寸言>
 他国から攻撃されると、自衛の権利を行使して、報復攻撃を行います。軍事力の強い国は、相手国が二度と攻撃してこないように、受けた被害を上回る反撃を行います。するとまたそれに対する反撃(テロも含む)が起こります。つまり、戦争を始めるのは簡単だが、戦争を終わらせるのは難しいという状況が生まれます。
 ラッセルの言うように「ある行為の道徳性をその結果によって判断すべき」ということなら、(戦争がエスカレートしないようにするために)過剰な反撃はひかえたほうがよいという判断がでてくるはずですが、そうはなりません。愛国心にかられて、「相手を徹底的にたたけ」という国民の声が高まり、政府もそれを無視できなくなります。
 そうして、ラッセルが直前にあげた「行為の原則」はどこかにいってしまいます。即ち、 「最も固有価値を持つ行為とは、固有価値が固有反価値に対して最大のプラスの差額(balance)を生み出す行為である、あるいは、固有反価値が固有価値に対して最小のマイナスを生み出す行為である」。

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