幸福は,それを直接追い求める人達によって最もよく手に入れられるものではない,とはよく言われることである。それは,善についても真理であると思われる。ともかく,思考においても,善悪を忘れてただ事実のみを知ろうとする人達のほうが,自分の欲望という歪んだ媒介物を通して世界を眺める人達よりも,いっそう善を達成する可能性が高そうである。
It is a commonplace that happiness is not best achieved by those who seek it directly; and it would seem that the same is true of the good. In thought, at any rate, those who forget good and evil and seek only to know the facts are more likely to achieve good than those who view the world through the distorting medium of their own desires.
Source: Bertrand Russell: Our Knowledge of the External World, 1914, chap. 1
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<寸言>
「急がば回れ」「幾何学(数学)に王道なし」「万事塞翁が馬」など、諺というものは絶対の真理を述べているわけではなくても真理の一端を表現しています。幸福の獲得も、真理の探求も、程度問題であり、同じ程度のものであっても、人によって満足したり、不満足であったりします。いずれにせよ、他人を押しのけて自分の幸福を追求したり、自分の欲望という鏡を介して世界を眺める人には、両方とも訪れそうにありません。
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