ラッセル英単語・熟語1500 |
理性を憎むように人間を導く(人が理性を憎むようになる)動機はいくつかある。両立しない欲求を持ちながら、それらが両立しないものだと気づきたくないかもしれない。収入以上の出費をしながらも、支払能力を維持したいと思うかもしれない。そうして(そのために)、友人から算術の冷厳な事実を指摘されると、その人を嫌いにさせてしまうかもしれない。
There are several motives which may lead people to hate reason. You may have incompatible desires and not wish to realize that they are incompatible. You may wish to spend more than your income and yet remain solvent. And this may cause you to hate your friends when they point out the cold facts of arithmetic.
Source: Bertrand Russell: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), preface.
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-preface-04.htm
<寸言>
両立しない欲求があるからこそ葛藤が起こります。その場合、その葛藤をはっきりと自覚する場合もあれば、意識下に抑え込み、自覚しない場合もあります。
ラッセルはホワイトヘッド(ラッセルより11歳年上の数学者・哲学者)とともに大著『プリンキピア・マテマティカ』(数学原理)を出版し、論理学の革命を担いました。その理性的なホワイトヘッドにも、まさにラッセルが指摘するような両立しない欲求がありました。ラッセルは自伝の中で、次のように書いています。
https://russell-j.com/beginner/AB16-100.HTM
「彼(ホワイトヘッド)はいつも金が足りないという恐れにつきまとわれていた。彼はそれを合理的な方法で解決しようとしないで,自分には金銭的に余裕があると自分自身に思いこませる期待のもと,向こう見ずにお金を使った。・・・。ホワイトヘッド夫人はいつも,夫がケンブリッジの小売商人たちに支払わないといけない高額の請求書を急増させていることを発見したが,それを言うことによって彼を狂気に駆り立てるかも知れないという怖れから,彼女は夫に,彼らに支払うだけの金がないことを言う勇気がなかった。私はいつも,必要なお金を内々で彼女に手渡していた。」
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