
![]() ラッセル英単語・熟語1500 |
強い恐怖の影響下では、ほとんどの人が迷信的になる。ヨナ(注:旧約聖書なかの予言書の一つであるヨナ書の主人公/ここでは「ヨナ書」そのもの)を船外に投棄した船員達は、ヨナの存在が嵐の原因であり、自分達の船を難破させようとしていると想像した(のである)。これと同様の精神状態で、日本人は東京の震災(注:関東大震災)の時、朝鮮人と自由主義者(例:大杉栄)を虐殺をした。
Under the influence of great fear, almost everybody becomes superstitious. The sailors who threw Jonah overboard imagined his presence to be the cause of the storm which threatened to wreck their ship. In a similar spirit the Japanese, at the time of the Tokyo earthquake took to massacring Koreans and Liberals.
Source: Outline of Intellectual Rubbish (1943)
Reprinted in: Unpopular Essays, 1950
More info.:https://russell-j.com/cool/UE_07-570.HTM
<寸言>
多くの国民が、自国が犯した罪については「そんなことはやっていない」とか、「やったけれど軽微なものだった」と主張する反面、相手(敵対国)が犯した罪は実際以上に糾弾します。
戦争においては、いずれの国も被害者であり加害者である場合がほとんどです。関東大震災における朝鮮人虐殺も南京事件における南京市民虐殺も「嘘」だとか、「ほんの軽微なものだった」と主張する人がいまだにけっこうおり、困ったものです。
ラッセルは、改造社による招待で、1921年7月17日から7月30日まで日本に滞在しました。そうして、7月26日、午前11時より、帝国ホテルで、日本の著名な思想家や知識人達と会見しました。(大杉栄、堺利彦、桑木厳翼、姉崎正治、上田貞次郎、阿部次郎、和辻哲郎、北澤新次郎、鈴木文次、与謝野晶子、福田徳三、石川三四郎、その他)。
その翌年(1922年)、関東大震災のどさくさにまぎれて、大杉栄は憲兵隊の甘粕正彦によって(内縁の妻である伊藤野枝とともに)絞殺されてしまいました。
ラッセルは、「自伝」のなかで、大杉栄と伊藤野枝を虐殺した憲兵隊を国家的英雄に祭り上げて学校の児童達に憲兵隊を称える作文を書かせた日本政府を皮肉っています。そんな日本だったので、ラッセルが会った日本人で好ましく思ったのは、(大杉栄の内縁の妻の)伊藤野枝だけだったと「自伝」に書かざるをえなかったラッセルの気持ちがよくわかります。
https://russell-j.com/beginner/AB23-140.HTM
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