
![]() ラッセル英単語・熟語1500 |
私達(人間)にはあらゆる種類の衝撃的な衝動と創造的な衝動があるが、社会はそれを甘受することを禁じており、サッカー試合や何でもあり格闘技(総合格闘技)という形で社会が提供する代替物は、ほとんど十分ではない。いずれ戦争を無くすとができるかもしれないと願う者は、長い世代に渡って未開人から受け継いだ本能を無害に満足させるという問題について真剣に考えるべきである。私自身は、探偵小説に十分なはけ口を見出し、殺人犯や犯人をおっかける探偵に、交互に、自分を同一視しているが、この代償的なはけ口は余りにもも穏やかすぎる(と感じる)人々がいることも知っている。そういう人々にはもっと強力なものが提供されるべきだろう。
We have all kinds of shocking impulses and also creative impulses which society forbids us to indulge, and the alternatives that it supplies in the shape of football matches and all-in wrestling are hardly adequate. Anyone who hopes that in time it may be possible to abolish war should give serious thought to the problem of satisfying harmlessly the instincts that we inherit from long generations of savages. For my part I find a sufficient outlet in detective stories where I alternatively identify myself with the murderer and the hunts-man-detective, but I know there are those to whom this vicarious outlet is too mild, and for them something stronger should be provided.
Source: Bertrand Russell: Social Cohesion and Human Nature, Dec. 1948.
In: Listener, v.40(n.1040): 30 Dec. 1948
Reprinted, with much omitted, as Chapter 1 of Authority and The Individual.
More info.: https://russell-j.com/cool/AI_1949.pdf
<寸言>
BBC(英国公共放送協会)の第1回リース記念講義(全6回の連続講義)の第一回目)として(1948年12月に)放送されたもので、大幅にカットされた上で、Authority and The Individual の第一章「Social Cohesion and Human Nature」に収録されたとのことです。従って、引用部分も部分的には修正が入っているかも知れませんが、多分、この部分は修正はなかったものと想像されます。
パソコンやスマホなどのゲームソフトで、敵を大量に射殺するゲームがあり、私の場合は「不快」に感じます。しかし、「(スポーツなどの)代償的なはけ口は余りにもも穏やかすぎる(と感じる)人々」が現実に犯罪を起こす代償になるのであれば、許容すべきだということになります。しかし、こういったゲームによって、実際に戦場で戦いたくなる若者もいるようであり、プラスマイナスでどうなるかよくわかりません。
この放送(動画)は下記で視聴できます。 https://youtu.be/I0-_9hiVc70
なお、trivial な知識ですが、ラッセルの探偵小説好きが気に入ったのか、江戸川乱歩は「哲学者ラッセルと探偵小説」のなかで、次のように書いています。
https://russell-j.com/cool/RANPO-2.HTM
「ロンドン・ディテクション・クラブというイギリス探偵作家のクラブがある。初代会長は、G.K.チェースタトン、二代目は E.C.ベントリー、三代目はドロシー・セイヤーズ女史で、会員は探偵作家三十名ほどの古風で皮肉な会である。
例会には会長が僧侶のガウンを着て、奇妙な儀軌(会則)を読み上げ、そのうしろには、会の表象である髑髏(どくろ)をビロードの台にのせたのを、一人の従者がうやうやしく捧げて侍立(じりつ)するといった調子だが、昨年(1953年)秋の例会には、哲学者バートランド・ラッセルが賓客として列席した。
ラッセルは非常な探偵小説好きで、一年三百六十五日欠かさず毎晩一冊ずつ探偵小説を読むといわれている。そのために名誉賓客として招待されたのである。
ラッセルの探偵小説好きは、彼の数年前の著書 Authority and the Individual(1949)の中の左(次)の一文(注:上記の引用文)でもわかる通りである。」
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell