
![]() ラッセル英単語・熟語1500 |
(人間の魂の) 不死の信奉者は、私が使ってきたような生理学的な議論に対して、魂と身体は全く異なるものであり、魂は身体の器官を通じて経験的に現れるものとは全く別のものであるという理由で異議を唱えるであろう。私は、これは形而上学的な迷信だと信じている。心も物質も、一定の目的においては便利な言葉ではあるが、究極の実在ではない。(人間を形作る)電子も陽子も、魂と同じように論理的な虚構である。すなわち、(魂も身体も)どちらも一つの歴史であり(ひとつの歴史で成り立っており)、一連の出来事(の連鎖)であって、単一の永続的な実体ではない。
Believers in immortality will object to physiological arguments, such as I have been using, on the ground that soul and body are totally disparate, and that the soul is something quite other than its empirical manifestations through our bodily organs. I believe this to be a metaphysical superstition. Mind and matter alike are for certain purposes convenient terms, but are not ultimate realities. Electrons and protons, like the soul, are logical fictions; each is really a history, a series of events, not a single persistent entity.
Source: What I Believe, 1925
More info.: https://russell-j.com/cool/WIB_1925.pdf
<寸言>
(人間の身体を含め)あらゆるものは、物質を構成する最小単位である(電子、陽子、中性子などの)素粒子からできています。素粒子の大きさは、「大きさは無い」とする理論と(非常に小さいが)「大きさを持つ」とする理論があるそうです(「超弦理論」においては全ての素粒子は有限の大きさを持つ"ひも"の振動状態であるとされている、とのこと。)
人間は亡くなっても「魂は残る」と本当に思っている人はどれくらいいるでしょうか? 「魂」を実体と考える人は、卵子と精子が受精してから一定の時間が経過したら、個々の肉体に魂が入り込んでくると考えているのでしょうか? 受精した後に細胞分裂が起こり、万能細胞ができ、様々な器官が作られ、神経ができ、その一部が脳となった時点で魂が入り込んでくると考えるのでしょうか? その場合、魂はこれまで地球上で生まれ死んでいった人の数だけあるのか、それとも人間の魂は一つだけで、それぞれの人間はその一部を形成しているだけでしょうか?
いずれにせよ、「死んでも魂は残る」と信じている人は何を信じているのでしょうか?
ラッセルが言うように、心も肉体も別々のものではなく、どちらも「論理的虚構」(logical fictions)であると考えたほうが理解し易いと思われます。
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell