バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Ru
ssell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500

 高等動物は全て,喜びを表現する方法を持っているが,喜びを実際に感じない時に喜び表わすのは人間のみである。これは「礼儀」と呼ばれ,徳目の一つに数えられている。・・・日本では1868年(明治維新)まで,社会的優越者(訳注:家来に対する主君,庶民に対する武士など)は,社会的劣者が社会的優越者である権力者の前で微笑し続けることを少しでも怠ったならば,その場で斬り捨てる権限(切捨御免)があった。家庭にあっては,妻は夫の前で,子は両親の前では,常に微笑していなければならなかった。このために,ヨーロッパ人旅行者には,日本人は陽気な国民であるように映ったのである。即ち,これは適者生存の一例である。


All the higher animals have methods of expressing pleasure, but human beings alone express pleasure when they do not feel it. This is called politeness and is reckoned among the virtues. ... In Japan, until 1868, a social superior had the right to kill a social inferior if he failed for an instant to keep smiling while in the great man's presence. In the family, the wife had to smile in the presence of her husband and the children in the presence of their parents. This was what made the Japanese appear to Western travellers such a cheerful people; it was a case of survival of the fittest.
Source: Mortals and Others, v.1, 1975
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<寸言>
 ラッセルの日本の歴史に関する知識はオックスフォード大学出版部から出版された定評のある日本史の本や著名な日本研究者から得たもののようです。実際は、時代劇のようにちょっと気に切らないというだけで「切捨御免」することはあまりなく、大した理由なく町民を「切捨御免」すれば処罰されたそうです。
 それはともあれ、幕末から明治までに?日本を訪れた西洋人の中には「日本人は微笑んでいる人が多い」という印象を持つ人が少なくなく、(現在のブータンやタイのように)「日本は微笑みの国だ」と紹介している本がそこそこあります。有名なのは東北地方を旅した英国人女性イザベラ・バード(1831-1904)が見た日本や,明治10年に東京大学の教師として赴任したエドワード・モースが見た日本です。

 ラッセルは1920年に約10ヶ月ほど中国に滞在した時、西湖を訪れ、籠(かご)かきの微笑を見て,中国人を賛美しますが、それに対し、魯迅は「もし籠かきが籠に乗る客に微笑を見せずにいたら,中国はとっくに今のような中国ではなくなっていた筈だ」と厳しい批判をしています。
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 (今村与志雄「日本文化,魯迅,ラッセル」)

 現在の日本でも、偉い人や上司などがつまらない話を延々としていると「不機嫌な顔」をしたくなりますが、多くの日本人が「興味をもっているような」顔をしたり、「作り笑い(頬笑)」をしたりする人が少なくありません。魯迅にならえば、「日本人が偉い人にほほえみを見せずにいたら、日本はとっくに今のような日本ではなくなっていた筈だ」と言いたくなるのは、私だけでしょうか? 

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