ラッセル英単語・熟語1500 |
興奮した時代においては,政治家は,推論する力(理性)も,客観的な(非個人的な)事実を把握する力も,知恵も,まったく必要としない。そのような時代の政治家が持っていなければならないものは,彼ら(大衆)が望んでいるもの(欲求しているもの)は必ず獲得することができることを,またそれを達成できるのは政治家の自分であると大衆に信じ込ませる能力(例:雄弁さ)である。
In excited times, a politician needs no power of reasoning, no apprehension of impersonal facts, and no shred of wisdom. What he must have is the capacity of persuading the multitude that what they passionately desire is attainable, and that he, through his ruthless determination, is the man to attain it.
Source: Bertrand Russell : Power, a new social analysis, 1938
More info.: https://russell-j.com/beginner/POWER03_200.HTM
<寸言>
興奮の時代というのは戦争の時代だけではありませんが、戦争が身近に起これば、興奮とともに恐怖が訪れます。平穏の時代にあっては、冷静に考えることができる人でも、興奮の時代が訪れると冷静さを失い、非常事態なら無理もない考え方や行動をとりがちです。
軍備産業や防衛産業はもっとも汚職や不当利益を得る好機になるので、愛国者を装って、軍事費・防衛費の倍増を唱えたり、憲法に非常事態条項を加えるべきだと声高に唱える人が増えてきます。
プーチンは強大な独裁的権力を背景にウクライナ侵攻(侵略)という暴挙にでました。しかし、誤算が続いており、ロシア内部からの反対の声も高まり、失脚の可能性もありそうだと思っています。
ラッセルの言葉から、関連するものを以下、少し引用しておきます。
「・・・ だが逆に、人間が互いに加え合う害悪は、科学的知識や科学技術の誤った使い方によって生れ、しかも増加しつつある。未だに、戦争、圧政、残虐行為が、貧欲な人間によって巧妙に行われている。善人をだまし、富を奪い、権力愛に根ざした大規模な独裁政治が続けられている。
恐怖、深層にあるほとんど無意識な恐怖は、非常に多くの人々を支配する動機であり、相互不信の源泉である。戦争や破壊的衝突を、闘争本能から類推して、「人間性の要求」として肯定的に考えることに私は反対する。それは誤った類推であり、無知な臆病にすぎないからである。」
出典:Authority and the Individual, 1949, chap.6: Individual and Social Ethics
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