ラッセル英単語・熟語1500 |
『西洋哲学史』は,偶然のきっかけで執筆し始めたものであったが,結果として,長年にわたる主な収入源となった。この企画に着手した時,それが,それまで私のいかなる著書もかち得なかった成功をおさめ,たとえひと時であったとしても,アメリカにおけるベストセラー・リストの上位に輝くとは,まったく考えてもみなかった。・・・。私は喜んでこの哲学史を書いていた。なぜなら私は,歴史は'縮小しないで'書かれるべきだとずっと信じていたからである,たとえば,ギボンが扱っている主題は,『ローマ帝国衰亡史』よりも簡略な本や,数冊の本で扱っても十分ではないだろう,という考えを私はいつも抱いていた。
The History of Western Philosophy began by accident and proved the main source of my income for many years. I had no idea, when I embarked upon this project, that it would have a success which none of my other books have had, even, for a time, shining high upon the American list of best sellers. ... I was pleased to be writing this history because I had always believed that history should be written in the large. I had always held, for example, that the subject matter of which Gibbon treats could not be adequately treated in a shorter book or several books.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2,chap.3: China
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB26-080.HTM
<寸言>
外国語で出されたものを日本語に翻訳して出版したり、論評したりする場合、どの版をテキストにするかは要注意です。(例:安藤貞雄先生は、岩波文庫のラッセル『結婚論』を訳出するにあたって、ラッセルが一部修正していることに気づかずに、修正前の古い原書をテキストにしています。)
この前書きましたように、ラッセルがアメリカにいた時に Simon and Schuster 社と出版契約を結んだため、まずアメリカで A History of Western Philosophy というタイトルで1945年10月に出版し(初刷:18,000部)、ラッセルが英国にもどってから、1946年11月に英国版の初版を出版しています(初刷:20.000部)。英国版は、タイトル先頭の「A」が取られているということは些末な知識ですが、(私は比較していませんが)Kenneth Blackwell 博士によると、序文の大部分が英国版ではさしかえられているとのことです。(A Bibliography of Bertrand Russell, v.1 compilled by K. Blackwell and Harry Rujya, 1994, p.180)
それはともあれ、世界中で翻訳出版されており、日本でも1954年にみすず書房から市井三郎先生の名訳で出版されてから、現在でも出版され続け、読みつがれており、世界中で出版された冊数は相当なものになると思われます。
なお、ラッセルはイギリス人ということで、英国での出版しか着目しないで、A History of Western Philosophy の出版年を1946年と誤記している人が時々います。
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