ラッセル英単語・熟語1500 |
トルストイは,権力の保持者も無抵抗手段にあえば道徳的に再生させられるだろうということを,非常に偉大な説得力をもって説いたが,1933年以降のドイツに対してはそれは明らかに真理ではなかった。トルストイは,権力の保持者がある点を越えてまで冷酷ではないという場合にのみ正しい。しかし,ナチスの冷酷さはこの限界点をはるかに越えていた。
Tolstoy preached with great persuasive force, that the holders of power could be morally regenerated if met by non-resistance, was obviously untrue in Germany after 1933. Clearly Tolstoy was right only when the holders of power were not ruthless beyond a point, and clearly the Nazis went beyond this point.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2,chap.3: China
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB25-030.HTM
<寸言>
絶対平和主義を唱える人は、トルストイのような考え方(無抵抗をつらぬけばどんな無慈悲な敵も改心するだろうという考え方)をする人がけっこういそうです。多くの場合はそうであったとしても、全面戦争の状態になればそのような思いはかき消されます。
自国民が比較的よい感情を相手国に持っている場合は、無抵抗主義もそこそこ効果を発揮するでしょうが、敵国に憎しみを持っている場合にはエスカレートしてしまいます。特に、相手国民を自国民より「劣等」だと思っている場合はそうです。そうして、敵国による残虐行為はこれ以上ないというほど非難しますが、自国が行った極悪非道な行いは、そんなものは存在しなかったか、あったとしても軽微であったと根拠なく思い込んだり、主張したりしがちです。
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